2023 Fiscal Year Annual Research Report
土層の生成から流出までの循環過程にもとづく新しい山地保全技術の開発
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21K14001
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
渡壁 卓磨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (10883663)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土層発達 / 土砂流出 / 表層崩壊 / 宇宙線生成核種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本事業では、基盤岩の風化に伴う土粒子の生成、ソイルクリープによる斜面下方への土層の輸送、および降雨時に流出する土砂の3つのプロセスを組み合わせた土層発達モデルを用いて、花崗岩の山地源流域における長期的な土層発達を予測した。宇宙線生成核種の分析によって得られた土層の生成速度には、古地磁気変動の影響を取り入れて再計算した値を用いた。降雨時に流域外へ排出される土砂量には、本事業の期間内に得た観測データを用いた。初期条件として土層厚を0.5mと一様にして、1600年分の土層発達過程をシミュレートした結果、凸型の斜面では土層が継続的に薄い状態が保たれ、凹型の斜面で時間経過とともに土層が厚く発達する様子が再現された。水流による土砂運搬の影響がない場合には、渓床でも土層が厚く発達したが、水流の影響をいれると渓床の埋積がなくなるため、実際の山地源流域の土層厚の空間分布をよりよく再現できた。表層崩壊の発生の危険性が高い斜面を抽出したところ、崩壊発生の危険性が高いとされる0次谷で、土層発達に伴い不安定領域が拡大する様子を捉えることができた。今後、気候の変化に伴う降水量の減少による水流の土砂運搬能力が低下すると、渓床の埋積が生じることで、山地源流域から下流域へ供給される土砂量の減少が生じることが予想される。また、表層崩壊が発生した場合には、一時的に下流域への土砂供給量が増加するが、水流による土砂運搬が持続的に生じるか、渓床が埋積されるかによって、長期的な土砂供給量が大きく変化する可能性がある。
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