2022 Fiscal Year Research-status Report
地震の震源特性はどれだけ空間変化するのか:散乱波を用いた精密推定
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21K14002
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
小木曽 仁 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 主任研究官 (40739140)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 震源特性 / 地震波散乱 / 地震波減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
観測される地震波形は、地震の震源特性、震源と観測点間の地震波伝播特性、そして観測点ごく近傍のサイト増幅特性の合積で表現される。本研究では、地震波の周波数成分のうち1-4Hzのやや高周波成分に着目して、地震波エンベロープを用いて震源特性を推定し、その地域性を検討するものである。そのためには、地震波の解析にあたって震源特性以外の影響を適切に取り除く必要がある。日本列島下は複雑なテクトニクスの場であることから、地震波伝播特性に関連する地震波構造(速度、減衰及び散乱)も複雑である。そのため、本研究において、背景速度場として3次元速度構造を考慮できる地震波エンベロープ合成プログラムを作成し、このプログラムを用いて中部日本で発生した深さ100km以浅の約770個の地震について、1-2Hz及び2-4Hzにおける震源放射エネルギーを推定した。背景速度場には日本全国1次構造モデルを採用し、ひとつひとつの震源・観測点ペアごとに最も観測エンベロープの形状を説明できる地震波散乱・減衰パラメータを推定することで伝播特性の影響を取り除き、その後、適切な拘束条件のもとで震源特性とサイト特性を分離した。その結果、得られた震源特性には明瞭な深さ依存性がみられ、深い地震ほど震源放射エネルギーが大きいことがわかった。この深さ依存性は2つの周波数帯でともに観察され、また、地震の震源メカニズムの違いによる差異は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
手法開発は順調に進んでいるが、新型コロナウイルス感染症の影響により国際学会に参加する機会が限られてしまうなど、研究成果発表に遅れが生じていることから「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は海外出張の機会が増えることから、幅広い機会をとらえて研究成果発表を積極的に行い、他の研究者と積極的に議論する。また、これまでに得られた各地震・観測点ペアごとの減衰・散乱パラメータを3次元地震波減衰・散乱構造に焼き直す手法を開発し、震源特性の地域性と構造パラメータの関連について検討を進める。
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Causes of Carryover |
海外学会への参加機会が限られるなど、本年度は研究成果発表に遅れが生じたため次年度使用額が生じた。繰り越した助成金は国内、及び海外学会等に積極的に参加するための費用、及び現時点までの研究成果の論文執筆に関連した英文校閲費や投稿料等に使用する。
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