2023 Fiscal Year Research-status Report
地震の震源特性はどれだけ空間変化するのか:散乱波を用いた精密推定
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21K14002
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
小木曽 仁 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 主任研究官 (40739140)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地震波散乱 / 地震波速度構造 / 震源パラメータ / 空間不均質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間では、地震波速度構造と震源パラメータの関連を検討するため、関東・中部地方で発生した地震のうち、深さ100kmより浅く、マグニチュードが3.0から4.5の範囲の718個を選択し、1-2Hzと2-4Hzの帯域において震源項の大きさを推定し、マグニチュードとの回帰式を推定した。地震波速度構造は、一般的に深さ方向の不均質性が水平方向のそれよりもずっと大きいため、速度構造と震源パラメータの関連を検討する上では深さ方向の速度不均質性を利用するのが効率的である。推定にあたっては、3次元速度構造を考慮できる地震波エンベロープ合成プログラムを利用し、直達S波到達時から80秒間のTime Windowで合成エンベロープと観測エンベロープを比較した。得られた震源項はどちらの帯域においてもマグニチュードと相関しており、一次式でよく回帰することができた。深さ30kmより浅い地震と深い地震に分類して回帰式の残差を比較すると、浅い地震は残差が負となり、深い地震は正となる深さ依存性が明瞭であった。なお、残差の水平方向の不均質性の検討は今後の課題である。地震波の放射エネルギーは震源における媒質の密度と速度の5乗の積に依存する量である(e.g., Sato et al., 2012)。本研究によって得られた残差の深さ依存性は、一次的には震源における媒質速度の違いで説明可能なことがわかった。しかし、回帰式からの残差のばらつきは非常に大きく、速度の空間変化のみでは説明できない可能性がある。これは震源パラメータが地震波速度構造以外と関連した空間変化をしているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3次元速度構造を考慮した地震波エンベロープ合成プログラムの波線追跡部分にバグが見つかり、その修正を行ったうえで改めて718個の地震のエンベロープを合成したため、進捗が遅れた。また、2023年度後半は所属機関のスーパーコンピュータが非常に混雑していたため、本研究の計算がなかなか実行されず、予定していた地震波減衰・散乱構造の推定を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、年度前半のスーパーコンピュータが比較的混雑していない時期に計算を実行し、地震波減衰・散乱構造の推定を進める。その結果と、2023年度に得られた震源項の残差分布を比較して、特に散乱構造との相関について考察する。
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Causes of Carryover |
プログラムのバグ等により研究成果の発表に遅れが生じ、予定していた学会発表や論文執筆といった成果発表に関する経費が執行できなかった。これらの繰り越した予算は国際学会発表や論文執筆といった成果発表に関する費用として執行する予定である。
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