2021 Fiscal Year Annual Research Report
Revealing spatiotemporal slow slip evolution at higher temporal resolution by kinematic GNSS
Project/Area Number |
21K14007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 優治 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (40878724)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スロー地震 / スロースリップ / SSE / GPS / キネマティック解析 / サイドリアルフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
キネマティック解析によるGPS座標時系列データ(キネマティック座標値)に基づいた高時間解像度でのスロースリップイベント(SSE)の推定に向け、2つの課題に取り組んだ。 1つ目の課題は、キネマティック座標値に含まれるマルチパスのノイズ特性の理解と、その低減手法であるサイドリアルフィルタの性能評価と改善に関する研究である(Itoh & Aoki 2022として出版済み)。具体的にはマルチパス以外の座標値推定誤差源を最小限に抑えられる実験的な観測環境でキネマティック解析とサイドリアルフィルタ適用を実施し、サイドリアルフィルタによって顕著に低減できるマルチパス誤差の周期帯を示した。また、標準的な解析設定で得られるキネマティックGPS座標値のノイズレベルの概ね最小値を得た。 2つ目の課題として、実際に発生したSSEのすべりの時空間発展過程の推定へキネマティック座標値を適用した(学術論文を投稿済み、査読中)。具体的には、1日間隔のGPSデータ(日座標値)を用いた先行研究で発生が報告されているSSEの検出を試みた。様々な既知の誤差源の低減を行うことで、30分間隔のキネマティック座標値を用いてもSSEに伴う地表の地殻変動を、日座標値を用いた場合と調和的に推定できた。逆解析ですべりの時空間発展を推定したところ、推定されたすべり過程は日座標値から推定されたものと調和的で、ノイズレベルの高いキネマティック座標値からもSSEを推定可能であるとわかった。ただし、得られたすべりの時間解像度は日座標値からの推定結果と同程度だった。これは、推定結果がキネマティック座標値に含まれる非テクトニックなノイズに影響されないよう恣意的に超パラメタを設定したことによる。このことから、キネマティック座標時系列を用いて1日以下の帯域でのすべりの過程の時間変化を推定するにはそのノイズ源の包括的な理解が必要であると示唆された。
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