2022 Fiscal Year Research-status Report
三畳紀末大量絶滅事件におけるグローバル浅海環境変動の復元
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21K14010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤崎 渉 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80815192)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 三畳紀 / 生物大量絶滅 / 石灰岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
顕生代において、少なくとも5回の生物大量絶滅(BIG5)が生じたことが、化石記録から示唆されている。約2億年前の三畳紀末に生じた大量絶滅は、BIG5の一つであった事が知られているが、その絶滅原因として当時の超大陸パンゲア分裂により生じた中央大西洋火成岩岩石区(Central Atlantic Magmatic Provinces: CAMP)形成に伴う大規模火成活動が提唱されている。そのCAMP火成活動が引き金となり、炭素循環摂動や海洋の無酸素化といった様々な浅海環境の変化が生じ、大量絶滅が引き起こされたと考えられている。しかし、これら浅海環境変動はすべて大陸縁辺に堆積した岩石から得られたデータに基づいており、局地的な情報を反映している可能性が否めない。一方で、日本列島に露出するジュラ紀付加体中には、海洋プレート表層で堆積したホットスポット海山頂部起源の礁石灰岩といった、失われた海洋中央部表層の環境情報を保存している岩石が産出する。そこで本研究は、これまで完全に空白域であった超海洋中央部にて堆積した古海山頂部起源の礁石灰岩から高解像度地球化学データを取得することで、三畳紀末大量絶滅の原因と考えられている大規模火成活動、及びグローバルな浅海環境変動(炭素循環摂動や海洋の無酸素化)の因果関係の解明することを目的としている。当初予定していた野外調査に関しては、感染症拡大を懸念し延期を余儀なくされたため、本年度は昨年度に引き続き地球化学プロキシの開発に着手した。特に大陸風化と火成活動の強弱によって変動を示すストロンチウム同位体比に着目し、ストロンチウム同位体比の前処理施設を筑波大学に設置した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症拡大が懸念されたため、野外調査に関しては当初の計画を通り進めることは難しいとと判断し、本年度は筑波大学にストロンチウム同位体比測定の前処理施設の立ち上げを完了させた。初年度の無機炭素及び酸素同位体比測定の迅速分析の立ち上げとあわせ、三畳紀末大量絶滅前後の浅海部における全球的な表層環境変動を読み解く地球化学プロキシの開発は着々と進展している。そのため、進捗状況はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度十分に行うことができなかった野外調査に重点を置き、地球化学分析だけではなく微化石(コノドント、フズリナ)抽出及び記載も並行して行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
感染症拡大の影響があり、野外調査を十分に行えなかったため、その野外調査費用として計上した。
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