2021 Fiscal Year Research-status Report
接触変成岩の温度履歴解明による高時空間解像度を有する地温勾配推定手法の確立
Project/Area Number |
21K14012
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森 宏 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (80788183)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 地温勾配 / 熱モデリング / 接触変成岩 / 炭質物ラマン温度計 / 貫入岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯は,多様な地球科学的大規模イベントの発生場であり,これら諸現象の理解には,地球内部における温度構造の解明が必要不可欠である.ただし,沈み込み帯の温度構造は時代とともに激しく変化しており,その長期的かつ広域的な温度構造の変遷を探る上では,地温勾配の把握が重要な手がかりとなる.本研究では,高温マグマの熱影響を被った接触変成岩の温度履歴に着目し,地質学的アプローチによる接触変成岩の温度解析および熱モデリングによる温度構造再現を組み合わせた,高時空間解像度を有する新たな地温勾配推定手法の確立を目指している. 2021年度は,中部地方伊那地域の甲斐駒ヶ岳貫入岩体周辺の接触変成域を対象として,炭質物ラマン温度計を用いた温度推定を実施した.計15地点で採取した岩石試料について,岩石薄片の作成・観察をおこなった後,炭質物のラマン分光分析と得られたラマンスペクトルの解析より変成温度の空間分布を明らかにした.得られた変成温度分布は,貫入岩体近傍では,貫入境界に近づくにつれての系統的な温度上昇を示す一方で,貫入岩体から離れた地域では異なる傾向が認められた.また,前者の温度構造について,簡略的な熱モデリングとのフィッティングを行ったところ,現実的なマグマ温度を入力パラメータとして使用することで,検出された温度上昇構造を説明可能であることが明らかになった. また,接触変成作用前の初期状態の把握,および異なる規模の貫入岩体における検証にむけて,中部地方の他の貫入岩体周辺の接触変成域および紀伊半島において,岩石試料採取を含む野外調査を行うとともに,一部試料については,温度解析を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,主に中部地方の接触変成域と紀伊半島において,岩石試料採取,岩石薄片の作成と偏光顕微鏡観察,およびラマン分光分析とスペクトル解析を行い,各地点の温度を決定することを予定していた. 中部地方に関しては,主要研究対象に設定した甲斐駒ヶ岳貫入岩体周辺において広域かつ連続的な温度分布を把握することができた.また,得られた温度分布の特徴は貫入岩体の熱影響を明瞭に保存していることを示し,本研究の重要作業である熱モデリングとの比較に有用な研究対象であることを明確に確認することができた.また,甲斐駒ヶ岳貫入岩体とは異なる規模での検証にむけた他の接触変成域および初期状態把握のため紀伊半島においても,温度解析に向けた作業を着実に進められている. 以上の通り,2021年度に計画していた作業を予定通り遂行しており,本研究は概ね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,引き続き炭質物ラマン温度計を用いた温度解析を行う.甲斐駒ヶ岳貫入岩体周辺域に関しては,温度データが蓄積されているが,貫入境界近傍においてはややデータ数が不足している.これらのデータは熱モデリングとのフィッティング結果に大きな影響を与える可能性があるため,追加の試料採取および温度解析を行う.また,他地域(中部地方の甲斐駒ヶ岳貫入岩体以外の接触変成域および紀伊半島など)の試料に関しても,温度解析作業を進める.加えて,上記の温度解析作業と並行して,地質構造解析による変形影響評価を行い,貫入時の正確な温度分布の復元を進める.
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Research Products
(5 results)