2022 Fiscal Year Research-status Report
固体地球応答モデルを用いた中新世温暖期の南極氷床変動に伴う海水準変動の評価
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21K14016
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
入江 芳矢 国立極地研究所, 先端研究推進系, 特任研究員 (30881015)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中新世温暖期 / 海水準変動 / GIA / 南極 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究で、数百万年間という長期間にわたりGIA(氷床変動に伴う固体地球の粘弾性応答)の数値シミュレーションを行うと、数値的に不安定が生じるという問題が明らかになった。当該年度は、引き続きこの問題に関して、不安定が生じるメカニズムについて理論的な解析を進めた。まず、GIAの数値シミュレーションで用いられる固体地球の変形問題に関して、固有モードの解析を行った。その結果、特定の空間スケールの変形において、数百万年の時間スケールを持つ非常に振幅の大きなモードが存在し、このモードによる影響が不安定に繋がることが判明した。さらに、より具体的にこのモードが生じる物理メカニズムを明らかにするために、様々な地球内部構造を仮定して計算を行った。地球内部の密度構造として非圧縮を仮定した場合の計算を実施したところ、不安定に繋がるモードが消失することが確かめられた。また、この地球内部の圧縮性によって生じるモードは、特に上部マントル(地表から深さ670 kmまでの領域)における密度構造と関連していることが判明した。そこで、上部マントルのみ部分的に非圧縮を採用した場合のGIAの数値シミュレーションを実施した。数値シミュレーションを実施するにあたり、これまでの研究実績のある最終氷期(過去10万年間)に関するモデリングコードを使用した。海水準変動、隆起速度、重力場変動などのGIA変動について、非圧縮を採用したことによる影響は最大で約20%であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、前年度に判明したGIAの数値シミュレーションにおける数値的な不安定の問題に関して、理論的な研究を進めた。これは、このような問題に関する先行研究が不十分であることが判明したため、この問題についてより詳細な解析が必要であると判断したためである。これにより、当該年度計画していた、GIAの数値シミュレーションを用いた中新世温暖期の相対的海水準変動の再現や、氷床変動史に関する広範囲なパラメータ領域での計算の展開、等の実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、当該年度に得られた理論的な研究成果を論文としてまとめる。その後、中新世温暖期の相対的海水準変動のGIA数値シミュレーションを実施する。並行して、シークエンス層序学に基づく相対的海水準変動の論文調査を実施し、データベース構築を進める。
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Causes of Carryover |
計算コードの開発が遅れ広範囲に渡るパラメータ領域での計算を実施できなかったため、当該年度に予定していた計算機の購入を次年度に見送った。さらに、当該年度に参加予定であった学会に参加できなかったため、次年度の学会参加の旅費および諸経費として使用する。
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