2021 Fiscal Year Research-status Report
スロー地震の測地帯域データの解析高度化と広帯域スロー地震モデルの検証に関する研究
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21K14022
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
矢部 優 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (30802699)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スロー地震 / 西南日本 / 南海トラフ / スロースリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では,西南日本で発生するスロー地震を測地データの解析と地震データの解析を統合して解析を行うことで,スロー地震の震源パラメーターの制約を向上させることを目指している.スロー地震のうち測地学的なシグナルは歪計・傾斜計を用いて解析されているが,イベントの検知はこれまで目視で行われてきた.しかし,長期的なカタログを構築し活動解析を行う上では,一定の客観的な基準に基づいて検出することが重要である.歪計・傾斜計は降雨の影響を受けやすいため,同一の観測点でも時間的にデータの質が変化してしまい,GNSSデータに対して使用される検出法をそのまま適用することが難しい.そこで本研究計画の初年度は,歪計・傾斜計を用いてスロー地震を客観的に検出する手法の開発に取り組んだ.手法開発・カタログ作成は概ね完了し,現在論文化の準備を進めている.また,本年度はDAS観測と呼ばれる地震観測に参加し,データを取得した.DAS観測は光ケーブルを地震計として用いることができる新たな観測技術であり,従来の地震観測と比べて非常に稠密なデータを取得することができる.従来的な地震観測が計測するのが地動変位であるのに対し,DAS観測が計測するのは光ケーブルに沿った歪であるなど,従来的な地震観測との違いも存在する.観測期間中にはスラブ内地震などが発生しており,そのデータを用いてスロー地震の発生するプレート境界の地震学的構造の制約することを目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の1年目の目標として,スロースリップの解析については定量的検知手法の開発を,微動の解析については取り逃がしを最小化するエネルギー推定手法の開発を挙げていた.このうち,スロースリップの定量的検知手法の開発については,1年目を終えて概ね手法開発・カタログ構築が完了し,現在論文の出版に向けた準備を行なっている.微動の解析については,当初の予定を変更し,四国におけるDAS観測を行なった.当初はHi-netなどの流通する観測網のデータを利用して微動のエネルギー推定を行う予定であったが,従来の地震観測に比べて非常に稠密にデータを取得できるDAS観測のデータを解析することで,スロースリップに伴う微動活動やスロースリップの震源域の構造を詳細に解明する手法開発を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,スロースリップの定量的検知手法の開発について論文としての出版を進める.さらに,検出したスロースリップについて,歪計・傾斜計・GNSSのデータを統合して滑りの時空間分布を推定する手法の開発に着手する.まずは一つのイベントに対象を絞って解析を行い,滑りの時空間分布と微動発生を比較する.その後,カタログ中の他のイベントについても解析を行い,滑りの時空間分布もカタログ化する.DASデータの解析では,記録された複数のスラブ内地震について解析を行い,プレート境界周辺の構造推定を試みる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍が継続し,参加予定の国内学会も全てオンライン開催となったため,旅費の使用額が減少した.次年度は感染状況も踏まえながら,協力者との対面での議論なども積極的に行う予定である.
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Research Products
(1 results)