2021 Fiscal Year Research-status Report
「生きた化石」現生オウムガイの高精度殻分析による化石頭足類分類精度の飛躍的向上
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21K14028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田近 周 東京大学, 総合研究博物館, 特別研究員 (50885126)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分類学 / 頭足類 / 化石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、化石記録が非常に豊富であり、生物進化に関する研究などのモデル生物の一つとして頻繁に 用いられてきた外殻性頭足類の中でもオウムガイ類に注目する。具体的には、過去の生物多様性を復元する上で重要となる、化石の生物種を分類、という点に焦点を当て、これについて改善すべく研究を行う。本年度はその中の小テーマの一つである「縫合線形態」という頭足類分類に おける重要パラメーターに対しその分類学的重要性についての検討を行った。2021年度の研究開始時までの準備期間に、研究に必要なサンプルのCT撮影を始めていたため、年度の早い段階で形態データの解析に取り掛かることができた。アメリカ自然史博物館に収蔵されているオウムガイの殻標本を同博物館においてCT撮影したのち、画像解析ソフトを用い再構成し、3次元モデルを構築した。また2次元・3次元形態解析を行い、縫合線形態その他のいくつかの形態パラメーターの解析を行い、どの形質が分類を行う上で有用であるのか、について議論した。結果として、縫合線形態のみでは現生オウムガイ類の分類を行うことが難しいということがわかった。これらの結果について、国際誌に投稿し年度内に受理・出版された。二つ目の小テーマであるオウムガイ殻の表現型の可塑性についても、2021年度にプロジェクトを開始している。こちらのテーマについてはより多くの形態データが必要となるため、アメリカ自然史博物館収蔵の標本を同博物館のCT装置を用いて継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは2つの小テーマから構成されるが、そのうちの一つについては当初の研究計画を完了し、得られた結果を出版した。二つ目のテーマについても標本の選別・CT撮影を始めている。新型コロナウイルスの影響で予定していた海外の博物館への出張を中止したが、全体としては当初の予定以上のデータを得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も引き続きアメリカ自然史博物館に収蔵されている標本のCT撮影を続ける。また、その他の博物館、大学において標本の観察・CT撮影を行うことも計画している。本年度は、形態データの解析についても研究協力者と議論をすすめる。
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Causes of Carryover |
研究代表者が所持していた物品で研究を遂行することができたため支出せずに済んだ。出張を予定していたが新型コロナウイルスの影響で中止とせざるを得なくなり、それにより旅費の支出もなくなった。本格的なデータ解析をまだ始めていないため人件費については翌年度以降に支出する計画に変更した。その他の経費として、出張で訪問した博物館などからの標本の運搬経費などを見込んでいたが、出張ができなかったためそれらの経費が生じなかった。翌年度はデータ保管・解析のための消耗品類、出張のための旅費、またデータ解析のための人件費の支出を予定している。また、標本の輸送や論文の出版にかかわる費用の支出も計画している。
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