2023 Fiscal Year Research-status Report
貝類ミネラリゼーション機構における適応的意義:原鰓類の微細構造進化に注目して
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21K14033
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 圭 金沢大学, GS教育系, 講師 (40780036)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 軟体動物 / 原鰓類 / 貝殻微細構造 / 貝殻基質タンパク質 / 真珠構造 / 均質構造 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
大槌湾・船越湾での継続的な調査により、当初目的としていた、それぞれ貝殻微細構造が異なる原鰓類の3系統のサンプリングが達成できた。目的種のRNA-seq解析、De novo アセンブリによる新規ゲノム配列の決定が完了している。またlocalBLASTによって既知の貝殻タンパク質の探索した結果、原始的二枚貝類の一群である原鰓類の貝殻形成の分子機構が極めて独自性の高いものである可能性が明らかとなりつつある。貝殻微細構造を制御すると考えられている貝殻基質タンパク質の研究は、これまでは主にモデル種を対象とした限定的な知見に基づく議論が続いていたが、本研究の成果によって、軟体動物の重要な形質である貝殻について、体系的な進化仮説が提唱できると期待される。 また、継続的な野外調査によって、産出年代が異なる(中生代~新生代)多数の化石原鰓類標本を入手できている。これらのサンプルについては、走査型電子顕微鏡による貝殻微細構造形質の観察が実施済みである。前述の進化仮説と総合することで、原鰓類における貝殻微細構造形質進化が適応放散に寄与したことを実証できれば、巨視的形態には現れないミクロスケールの形質進化の重要性が提言できるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
かつて調査地である大槌湾・船越湾において多産すると報告されていた対象種の1種が恐らく震災の影響でほとんど採取できず、タクソンサンプリングのための調査に時間を要していたため、全体としての進捗は遅れている。ただし、この最大の課題を令和6年度はクリアできた。このため、一連の研究成果をまとめ上げるためのデータは概ね揃いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
原鰓類の解析結果は、最終的にトランスクリプトーム解析とプロテオーム解析の結果を組み合わせることで、軟体動物という分類群を特徴づける貝殻の進化史に迫ることを目指す。プロテオーム解析は、タンパク質の抽出実験まで作業が進展しているため、まずはこの点について成果を投稿論文にまとめ上げることを目指す。また、これを踏まえて化石原鰓類の貝殻微細構造の進化についての研究成果をまとめ上げることを目標とする。この他、微細構造形質の可塑的発現についてのデータを得るため、次年度も継続して大槌湾での調査を実施する。
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Causes of Carryover |
アメリカでの地質調査を実現するため、円安などの情勢によって高騰する海外渡航費を捻出できるよう旅費を次年度分に節約したため。
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