2022 Fiscal Year Research-status Report
温度勾配を持つナノ構造材料における界面拡散駆動変形過程の原子論的解明
Project/Area Number |
21K14042
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新里 秀平 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (10853202)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ構造材料 / 原子モデリング / 界面拡散 / 温度勾配 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体材料においても流体と同じように温度勾配を駆動力とした拡散が起こることは知られているものの,従来のマクロスケール材料においてその影響は無視できるほど小さいものであるとされてきた.しかしながら,材料の寸法スケールをナノスケールまで小さくしたとき,表面や結晶粒界といった界面における原子の拡散が従来の材料と比べて変形に大きく寄与することが明らかになっている.本研究課題では原子モデリング手法を用いて温度勾配を持つナノ構造材料の界面での原子拡散挙動と,それに伴う変形メカニズムの詳細の原子論的解明を目指す.令和4年度は、温度勾配下に置かれたナノワイヤの内部及び外部での定常的な原子拡散の加速モデル構築を目的として、グランドカノニカルモンテカルロ法による原子分布解析モデルの構築に取り組んだ。はじめに、グランドカノニカルモンテカルロ法による原子分布発展モデルを適用するために必要となる表面原子及び材料内部の原子空孔の化学ポテンシャルの獲得を行った。様々な温度下における空孔形成エネルギーおよび表面への原子吸着エネルギーを分子動力学法により求めることで、材料内部と表面との化学ポテンシャルの差を計算し、これらの値の荷重依存性を評価した。これにより、圧縮応力下で原子の流出が促進されることを定量的に示した。その後、獲得した化学ポテンシャルパラメータを入力としたグランドカノニカルモンテカルロ法による計算を実施することにより、表面原子拡散および、高温側・低温側それぞれでの材料表面と内部での原子の流入・流出過程に対する有効性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、(a)温度勾配により駆動される表面拡散プロセスの解析、(b)結晶粒界面における原子拡散プロセスの解析、(c)界面拡散駆動変形の予測モデルの構築の3つの課題に取り組むことで、温度勾配下での材料変形プロセスの原子論的解明とその予測を行うことを目的としている。令和4年度は(a)温度勾配により駆動される表面拡散プロセスの解析の取り組みとして、表面及び材料内部の化学ポテンシャルの獲得を行い、構築したモデルによる計算を実施することができたため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は本研究課題の3つの実施項目のうち(b)結晶粒界面における原子プロセスの解析に取り組み、様々な結晶粒界面における原子拡散プロセスの解析を行う。また、これまでの実施項目と合わせて温度勾配下でのナノワイヤ成長モデルを構築することで、温度勾配下におけるナノ材料表面・界面における原子拡散の体系的な知見の獲得を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度の実施内容について待ち時間にとらわれず円滑に進めるため所属研究室の計算機システムを優先的に使用したことで大型並列計算機の利用料が少なくなったことと、当初予定していた研究打合せが一部オンラインへと変更になったことにより、そのための出張が不要となったため次年度使用額が生じた。令和5年度においては大規模並列計算機の利用料に充てる他、所属研究室所有の計算機システムでは実施が困難な大規模解析を、大規模並列計算機の待ち時間にとらわれず円滑に進めるために、令和5年度申請分と合わせて計算機購入のための物品費として使用を予定している。
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