2022 Fiscal Year Research-status Report
耐食性と疲労特性を両立させる低合金鋼の新たな加工方法の探求
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21K14059
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
井尻 政孝 東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (10840374)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャビテーション / 鉄鋼 / 赤錆 / 疲労特性 / 硬度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,処理後の表面に形成する不働態皮膜とその皮膜における大気腐食環境下の耐久性を調査した.光学顕微鏡で観察した薬品キャビテーション処理(MC-MFC)後の表面では,孔食と赤錆の抑制が観察された.孔食の内部では,結晶粒のような生成物が観察された.これは鉄鋼材料の微視組織を観察するときに使用されるナイタール液でエッチングしたときのような微視組織が観察された.孔食の周囲では皮膜のような生成物も観察された.表面電位測定では,未処理材が273 mVであったのにも関わらず,MC-MFC処理後の表面は400 mV以上になり,高い表面電位を示したことから,処理後の表面に化合物が形成された可能性がある.表面の化合物をレーザー顕微鏡で観察したが化合物は確認されなかった.表面に形成される生成物の成分を検討するため,FeとOをグロー放電で分析した.各表面処理前は最表面にFeの元素が多く,Oの元素は少ない.加工後の表面では,MC-MFCがMFC(薬品を使用しない)よりFeの元素が多く,Oの元素が少ない.MFC後の表面ではFeが酸化することで発生する赤錆の増加により,酸素が表面近傍に増加したと考えられるが,MC-MFC後の表面では赤錆がほとんど形成されていないため,別の要因が考えられる.各処理後に形成されている化合物を特定するため,未処理材と各処理後の試料のFT-IRスペクトルを調査した結果,OHとα-FeOOHとβ-FeOOHに帰属するピークを確認した.耐久性について複合サイクル試験を行った結果,MC-MFCはMFCより,黒さびが多く大気腐食環境下に耐久性があることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期間内に装置が発注できているため,予定通り研究を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は表面改質材の疲労特性評価について,残留応力測定,平板曲げ疲労試験で確認する.試験後は破面観察や微細組織観察をSEMにより実施する.
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Causes of Carryover |
本年度、実験に使用する物品を購入した際,88円余りましたので,次年度に加えたいと思います。よろしくお願いいたします。
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