2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanism for improving joining strength and durability of hybrid CFRTP by addition of nanofibers
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21K14060
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松本 紘宜 神奈川大学, 工学部, 助教 (50850070)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 接合強度 / 結晶特性 / 射出オーバーモールド |
Outline of Annual Research Achievements |
繊維強化熱可塑性樹脂の成形法として,射出オーバーモールディングは短繊維と連続繊維強化樹脂の成形法をハイブリッド化することで,軽量かつ高強度で複雑な形状を有する成形部材を短サイクルで成形することが可能な有望な技術である.しかしながら,異なる部材を組み合わせるため,接合部(ウエルド部)が生じ,その接合強度は成形条件によって大きく依存するため,信頼性の高い強度を発現することが課題となっている. 本研究は,あらたに接合部をナノ繊維で直接補強することを提案し,そのナノ繊維による補強効果を発現するためのメカニズム解明に取り組むものである.接合強度に関係のある因子は,接合部の温度変化・圧力であることが分かっているが,一方で半結晶性樹脂の結晶の融解挙動や結晶の組織が接合強度に及ぼす影響については議論が進んでいない. そこで,初年度においては,ナノ繊維の結晶核効果に着目した.単繊維(CF)の炭素繊維周りのセルロースナノファイバー(CNF)の配置状態がポリプロピレン(PP)の結晶化挙動に及ぼす影響の基礎検討を行った.この基礎検討より,CF表面にCNFを配置すればCFに沿ってPPの結晶化(トランスクリスタル)が促進し,CFとPP間の界面せん断強度が増加する可能性があることが示唆された.一方で,PPマトリックス中にCNFを直接分散させた場合は,CF表面のPPのトランスクリスタルの成長を阻害することが示された.よって,CNFの配置位置によって接合部付近のPPの結晶状態が大きく変化することが示唆され,CNFの添加位置によって接合強度へ影響を及ぼす可能性があることが分かった. また,ナノ繊維の添加効果の影響を除外するために,接合部のPPの結晶化の状態のみを変化させ,接合強度に及ぼす影響について検討を行った.これにより,接合条件によらず接合部の結晶化度を下げることで接合強度を増加することが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度は,当初の計画通り,成形条件の観点からナノ繊維の補強効果およびその信頼性を考察するべく,クリープ特性についても調査を行っている.この研究成果については次年度に研究発表をすることを予定している.また,CNFの結晶核効果という観点から,接合部のPPの結晶化の状態が接合強度に大きく影響を及ぼしていることも明らかにすることができた.さらには,CFに対するCNFの添加位置によって,PPの結晶化挙動・組織も大きく異なることが分かった.よって,接合強度の発現メカニズムの解明のための基礎データの取得はおおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度においては,樹脂の結晶化状態が接合強度に大きな影響を及ぼすことが示された.この点については,接合界面部の樹脂温度と樹脂の結晶融解挙動または結晶化挙動を紐づけた考察が必要であることが示唆された.初年度では,実験的に金型内部の温度や圧力を取得するシステムの構築を済ませた.また,シミュレーションソフトウエアを導入し,金型内部の温度・圧力変化を調査できるように環境を整えている.そのため,今後の研究は,実験的に取得したプロセスデータをもとに,シミュレーションによる温度・圧力を予測しながら,結晶融解・結晶化挙動を予測するとともに,接合強度を予測するシステムの構築を進める.また,初年度に明らかになった,CNFの添加位置によるPPの結晶化挙動に及ぼす影響についても考察し,実験的にそのCNFの添加位置と接合強度の相関関係についても考察を進めていく予定である. また,機関移動に関係する設備の整備については,型締力50トンの射出成形機を1台有しているため,R3年度に使用していた金型をベースに金型を製作し,環境整備も進めてながら,解析を中心に研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
初年度のシミュレーションの契約時期に依存して,保守費を契約開始月から支払ったため,次年度使用額が生じた.この使用額については,次年度の材料費または,型内圧センサー等に拡充する予定である.
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Research Products
(3 results)