2021 Fiscal Year Research-status Report
複合添加剤によるナノテクスチャ構造の自律形成手法の開発
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21K14065
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
田所 千治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00736770)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トライボロジー / 潤滑油 / 添加剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
機械システムの可動部では摩擦損失を低減させるために潤滑油が用いられている。潤滑油は、主成分である基油と極微少量(0.1%程度)の添加剤から成る。潤滑油が摩擦損失を低減させるのは、摩擦面に潤滑膜を形成させて金属同士の接触を妨げるためである。潤滑膜には、基油が流体力学的に作用して形成させる流体膜と、添加剤が金属表面に優先的に吸着して自発的に形成させる自己組織化膜がある。また、自己組織化膜には、添加剤分子がそのまま吸着して形成される吸着膜と、添加剤分子が化学反応して形成される反応膜とがある。本研究では、異なる2種類の添加剤を用いることで反応膜と吸着膜からなる複合ナノテクスチャを自律的に形成させ、低速度・高荷重下においても低摩擦性を維持可能な潤滑システムの創成を目的としている。 研究初年度である本年度では、当初の計画の通り、高温(100 ℃)下において摩擦係数および膜厚分布を計測可能な摩擦試験環境を整えた。摩擦試験は、鋼球とガラス平板を用い、高接触面圧力となる点接触の摩擦形態を採用した。潤滑膜の膜厚分布は光干渉法を利用して計測しており、具体的には鋼球とガラス平板を純転がりにて転がり接触させて、連続的に膜厚プロファイルを取得することで、膜厚の高精度かつ空間分布としての計測を可能とした。本年度の後半では、反応膜を形成させるモデル添加剤としてZnDTP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)を、基油としてヘキサデカンを用いて、反応膜の形成過程を調べた。その結果、純転がりの転がり接触では周囲温度によらず反応膜を形成させないこと、高温かつ滑り摩擦下において反応膜の形成が開始されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温摩擦試験環境の構築が完了しており、添加剤による反応膜の形成過程の調査に着した。これにより、本研究は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
高温摩擦試験環境の構築が完了したことから、反応膜の形成過程の調査を引き続き実施する。単成分の添加剤による反応膜の形成過程を調査した後、吸着膜を形成させる添加剤を追加し、潤滑膜の形成への影響を調査する。
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Causes of Carryover |
実験補助の人件費が生じる実験を次年度に実施することにしたため、次年度使用額が生じた。研究計画に遅れはほとんどなく、次年度使用額は次年度中に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)