2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation on an Outgassing Mechanism of Fluid Lubricated Bearings Using Ionic Liquids for Ultra-High Vacuum Circumstance
Project/Area Number |
21K14068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 貴雄 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (80649400)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオン液体 / 超高真空 / 流体軸受 / 半導体製造装置 / 冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は,初年度に製作したイオン液体循環装置からイオン液体の供給を受けて浮上する静圧型の軸受試験装置を設計・試作し,100 ml以上のイオン液体を循環中に浮上する条件下での真空対応性能を評価した.本研究の静圧軸受は半導体製造装置の機械要素を想定しているため,最も基本的構成と考えられる半導体ウエハを直接浮上させる構造とした. 現状の製造装置では,低真空環境においてウエハ裏面からHeガスを供給してウエハと把持機構のすきまをみたしているが,これをイオン液体にすることで,ウエハの機械的非接触浮上,高い冷却性能を得ること,除電や超高真空プロセスが使用できるようになるなどのメリットが挙げられる.また,環境面においても,流体の循環再使用ができるというメリットがある.今回の研究では,主に超高真空環境下でウエハを浮上させた際のウエハ下のイオン液体挙動とアウトガスの評価を行った. 試作した装置は,直径70 mmの円形軸受面を持ち,中心に直径0.5 mmのイオン液体供給孔をもつ.浮上量は,4 inchウエハを用いた際に20 umとなるように調整した.非浮上時の到達真空圧は,1.0×10^-5 Paであり,チャンバが空の状態と同様であった.イオン液体を循環させ,ウエハを浮上させた際の真空圧は5.5×10^-5 Paであり,静圧軸受動作中にも超高真空を維持可能な能なことを示した.流体の循環使用が可能な静圧型の流体軸受の動作中に10^-5 Paを維持可能なことを示した過去の研究には,代表者の知る限りでは存在しない.アウトガスにおいても,半導体製造に適用可能な範囲であることが示された.これらの成果は国際詩にまとめられ,投稿された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軸受試験装置の試作がおおむね完了し,予定している測定項目に加えて,半導体製造時のウエハの加熱を模擬して軸受の冷却能力を評価する試験を行った.これらの結果は良好で,この面においては計画以上の進展があったといえる. 当初から予定されていた高真空環境における軸受の試験には,機械的性能試験とアウトガスの試験の2種類がある.機械的な試験においては,イオン液体供給圧力に対する浮上量を求めた.アウトガス試験においては,10^-5 Pa 台の超高真空環境下を安定的に維持しつつ,イオン液体を連続的に循環させ軸受浮上が可能であることを示した.過去の研究では,液体を用いた静圧型の軸受の浮上中の真空圧力は10^-4 Pa台が最高到達真空圧であったため,進展があったといえる.アウトガスの種類と分圧を測定した結果,イオン液体使用量に対して発生するアウトガスの種類に違いが見られた.違いが発生する理由は今後調査する予定である. 軸受形状におけるアウトガスの発生個所特定の実験では,政界情勢のためか材料入手の遅れのため,直動機構の完成に若干遅れがみられる. 当初からの実験に加えて行われた軸受の冷却試験では,流体軸受で浮上させた物体を発熱させそれを高真空下でどの程度冷却することができるかの評価を行った.高真空下で液体を用いる流体軸受は,非常に高い冷却能力を示した. 以上より,当初より進展もあるが,試験装置の製作に遅れもみられるので,区分(2)とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,当初より予定されていた,直動軸受機構を用いたアウトガス発生個所の特定の研究に加えて,イオン液体の使用量の違いによって,同一のイオン液体であってもアウトガス分圧スペクトルが異なる理由の調査を行う.直動機構は,ここまでの研究で使用している物体の浮上のみを行う基本的な構造の流体軸受とは異なり,非接触のリニアモータによって,一軸方向に駆動可能な,より実用的な形状となっている. 実用的な構造で現象の解明を行わなければならない理由は,需要に対する知見の少なさである.近年,超高真空環境下でイオン液体を用いた流体軸受や液体循環の需要が高まっていることは,これに関連する知財出願数を見ても明らかであり,本研究の成果でもその実現性が明らかとなってきた.しかしながら,これまでに明らかにしてきた流体軸受の真空対応性は,高真空環境における基本的なアウトガスの評価に留まっており,実用的な挙動,たとえば回転運動のスピンアップやストップ,直動機構のステップ動作等,についても実験的に評価する必要がある.真空対応性が求められる半導体製造装置等に導入する機構の設計指針を得るためには,実用寄りの機構構造でありながらも,基礎的研究が必要となる.従って,今後の研究においては,主に直動機構に焦点をあてて,アウトガス評価を行い,軸受の内部形状,例えば溝深さやポケット形状,の違いによる真空対応能力の違いと,アウトガス発生個所の特定を進める.また,液体量を変更して評価を行うことで,前述のスペクトルの違いやメカニズムも調査する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は生じていない.
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