2021 Fiscal Year Research-status Report
金属/絶縁体相転移界面におけるフォノン散乱挙動の解明
Project/Area Number |
21K14092
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
馬場 将亮 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (10826176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱制御 / 金属―絶縁体相転移材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,金属/絶縁体界面におけるフォノン散乱挙動の解明である.金属/絶縁体界面をつくる手法としては,二酸化バナジウム(VO2)とタングステンドープしたVO2(W-VO2)を用いる.VO2は室温付近で可逆的な相転移をする材料であり,相転移温度以下では絶縁体(単斜晶),相転移温度以上では金属(正方晶)となる.また,VO2にWをドープすると相転移温度が低下する.VO2とW-VO2の積層体(VO2/W-VO2)では,両材料の異なる相転移温度に起因して,ある温度範囲において積層界面が金属/絶縁体界面となる.金属/絶縁体界面でフォノン散乱が起きるとすると,この温度範囲において素子の熱抵抗が増加し,熱が流れづらくなる.つまり,ある温度範囲だけ高い熱抵抗を示す素子が作製できる.本技術が確立すれば,熱レギュレータ(温度を一定に保つ素子),熱ダイオード(熱流を整流する素子)を容易に設計できる.また,熱レギュレータ,熱ダイオードとしての性能も積層数を変更することで制御できる. 初年度はRFマグネトロンスパッタリングを用いてVO2/W-VO2積層体および各材料の単相素子の作製を行った.結果として作製手法を確立することができた.また,素子の熱抵抗を測定し,金属/絶縁体界面があると熱抵抗が増加することも確認できた.ただし,作製した素子および測定回数が少ないため,再現性を確認する必要がある.初年度の研究によって積層体の各層の厚さがフォノン散乱に影響することが明らかになった.そこで,今後各層の厚さが異なる素子を作製し,物性測定を行う.これらの結果を基に金属/絶縁体界面においてフォノン散乱が起きる条件を特定する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の進捗としては,VO2/W-VO2積層体の作製手法の確立ができた.RFマグネトロンスパッタリングを用いて積層体の作製,各材料の単層素子の作製ができ,相転移挙動や熱伝導率を測定することができた.さらに,VO2/W-VO2積層体は材料内部に金属/絶縁体界面がある場合に熱抵抗が増加することを実験的に明らかにした.これらの結果に関しては,まだサンプル数が少なく,十分な再現性の確認ができていないため,今後再現性の確認を行う. また,初年度に作製した素子の物性値から,本技術には素子の各層の厚さが影響を及ぼすことが明らかになった.そのため,今後は,各層の厚さを変化させフォノン散乱が起きる条件を明らかにする.
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究項目のほとんどが実施されており,予定よりも大幅に早い速度で研究が進んでいる.今後の研究としては,再現性の確認およびフォノン散乱が起きる条件を明らかにするために素子の各層の厚さを変化させた素子の作製を実施する.また,今回は一層ずつ積層したVO2/W-VO2積層体を作製したが,今後は層の数を増やしより広い範囲で熱抵抗を制御できる素子の開発を目指す.
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Research Products
(1 results)