2021 Fiscal Year Research-status Report
炭素繊維強化プラスチックCFRP燃え拡がりモデルの高精度化
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21K14093
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小林 芳成 岐阜大学, 工学部, 助教 (00827016)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炭素繊維強化プラスチック / 燃え拡がり / 炭素繊維配合方向 / 限界酸素濃度 / 燃え拡がり速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,炭素繊維配合方向の異なる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のシートを作成し,静止雰囲気中および対向流中において,それらの燃え拡がり挙動を実験的に調査した.その結果,いずれの条件においても炭素繊維(CF)の配合角度が大きくなるにつれ,燃え拡がり限界を指す限界酸素濃度は上昇し,燃え拡がり速度(FSR)は低下することが明らかになった.これは,CF配合角度が大きくなるにつれ,CFRPシートの燃焼性が低下することを意味している.CFRPシートは熱伝導率の高い炭素繊維を含んでいるため,ポリマーなどの低熱伝導な材料と比較して固相の熱輸送が著しい.そのため,CF配合角度が大きくなるにつれて,燃え拡がり方向とは異なる横方向への熱輸送量が増加する.これにより,火炎から未燃領域への熱のフィードバックが減少し,実験結果のように燃焼性が低下したと推察される.CF配合角度によって固相の熱輸送量が変化することを考慮し,実験結果から各CF配合角度における燃え拡がり方向の熱伝導率─有効熱伝導率─を算出した.そして,その有効熱伝導率を,CF配合方向と燃え拡がり方向が同じ「一方向CFRP燃え拡がりモデル」に組み込むことで,CF配合方向が一方向ではないCFRPシートにも適用可能な燃え拡がりモデルを構築した.当モデルで推算したFSRは,静止雰囲気中で測定したFSRとは定量的に一致したが,対向流中では大きな乖離があり,特に高流速になるにつれてその差は大きくなった.そのため,CF配合方向のみならず,様々な対向流条件にも対応可能な燃え拡がりモデルへの改良が求められる.本年度得られた成果は,CFRP燃え拡がりモデルの高精度化に寄与するものであり,燃焼科学の深化のみならず火災安全性の向上にも貢献することが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のスケジュール通りに研究を遂行できており,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)燃え拡がりモデルの高精度化に資する実験および理論の検証が行えたため.そして,それらの成果を学会やシンポジウム等で発表することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
改良した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)燃え拡がりモデルでは,静止雰囲気中の燃え拡がり速度(FSR)は精度良く推算できても,対向流中のFSRは未だ実験値と大きな差がある.その原因として,対向流速に依存する火炎高さを低く見積り過ぎており,その結果火炎からの熱輸送量が大きくなり,高いFSRが算出されたと推察される.そこで,火炎高さのモデル式を改良することで補正することを目指す.現在のモデル式では,対向流速の増加に伴って火炎高さはゼロに漸近するモデルとなっている.しかし,火炎高さが消炎距離以下になることは考えられないため,対向流速の増加によって火炎高さは消炎距離に漸近するようなモデルに改良する.そして,再度CFRPシートの燃え拡がり実験を行って火炎高さを測定し,改良したモデルが正しいか検証する.そうして改めて対向流中におけるFSRを推算し実験値と比較・考察することで,CFRP燃え拡がりモデルの更なる高精度化を図る.
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Causes of Carryover |
物品の購入額が見積額よりも安価であり,また当初購入予定であった機器をすでに保有していた機器で代用できたため.また,新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,多くの学会・シンポジウムがオンライン開催となり,旅費などの支出が大幅に削減されたため.
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Research Products
(2 results)