2021 Fiscal Year Research-status Report
風車出力を増大する風速変動対応型・動的MPPT制御システムの開発
Project/Area Number |
21K14153
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
又吉 秀仁 大阪工業大学, 工学部, 講師 (80882381)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 風力発電 / 再生可能エネルギー / 小型風車 / 垂直軸風車 / MPPT制御 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
風力発電機は風速に対して最適な回転速度でブレードを回転させることにより、最大電力で発電することが可能となる。しかし、風速変動の大きい風況下において大きな慣性モーメントを持つ風力発電機の回転速度を迅速に制御することは難しく、発電出力は最大で40%以上減少する。特に風速変動が頻繁である日本においては、風速変動による風車発電出力の低下は重大な問題である。研究代表者は先行研究において「回転速度指令値シフト制御」を提案し、一般的な最大電力点追従(MPPT)制御手法と比較して24%の発電電力量増大を確認した。しかし、回転速度指令値シフト制御は日本の内陸部のような低風速かつ風速変動が大きい風況のみを対象とした制御設計であったため、中風速~高風速時に対しては適切な制御ができないという課題があった。 そこで当該研究では、風況を低風速の場合に限定せずに、機械学習を用いて様々な風速変動の頻度と大きさ、風速の現在値、風車回転速度のパターンを考慮し最適な回転速度で風車を運転することができる動的MPPT (DMPPT: Dynamic-MPPT) 制御システムを開発する。風車による発電電力は風速の3乗に比例するため、高風速を効率的に電力変換することが重要である。したがって、風速変動が大きい場合はMPPT制御のように迅速に最適回転速度を追従するよりも、回転速度を最適値よりも適度に高く維持することで、発電電力を増大することができる。本研究により、従来のMPPT制御を利用した場合と比較して発電電力量を30%以上増大することが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DMPPT制御システム開発の初期段階として3つの研究項目があり、(1) 風速変動の指標化 60%程度、(2) 実験装置製作 20%程度、(3) 風速計の整備 80%程度の進捗となった。 DMPPT制御システムでは風車の固有特性と風速変動に合わせた最適回転速度指令値を随時機械学習により探索・修正を行うため、「風速変動の指標」は特に重要な項目である。研究を開始した当初は風速変動の指標として、これまで風力発電の研究で多く用いられてきた標準偏差を用いた指標の採用を検討していた。しかし、標準偏差を用いた風速変動指標では風力発電の効率に対する悪影響を適切に指標化できないことが明らかとなった。そこで新たに風速変動の指標化を行うため、風力発電システムの動作点追従を遅らせる要因の特定を行った。これらの要因は「風速変動幅」、「風速の平均値」、「風速の変動周波数」、「風車の慣性モーメント」、「風車の形状」、「電力変換の上限値」の6つに分類されると考えられ、それぞれの要因がどのように発電電力を低減するかをシミュレーションにより調査した。具体的にはMATLAB/Simulinkにより風力発電システムのシミュレーションモデルを作成し、様々な風速変動幅と平均風速の組み合わせパターンに対する平均電力低減割合をグラフ化した。その結果、同じ平均電力低減割合をとる風速変動幅、平均風速の組み合わせが複数存在することが明らかとなり、風力発電制御での使用に適した風速変動の指標とするため平均電力低減割合をそのまま風速変動値として扱うことに決定した。つまり風車発電電力をより大きく低減させる風速変動パターンを「風速変動が大きい」と定義した。本研究で確立した新な風速変動指標を用いることで、風力発電の動作決定をより適切に行うことが可能となると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により新たな風速変動の指標化を確立し、DMPPT制御の有効性を改善されたと考える。今後の研究では提案する風速変動指標を制御指令値に反映し、発電効率の改善がどの程度になるか調査することが目標である。電力低減割合の改善度が確認できれば新指標の妥当性を評価することも可能である。現在、不完全な風況データと不完全な風力発電システムの動作点データから、機械学習を用いることで全ての風況に対する適切な指令値を生成するシステムを開発している。 シミュレーション検証や機械学習システムの開発と並行して、今年度は小型垂直軸風車を用いてフィールドワークも行う。本大学に小型垂直軸風車を設置し、提案制御により発電電力量が増大するかを検証する。フィールドワークの結果をもとに実用性の高い動的MPPT制御システムを開発することを予定している。
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