2022 Fiscal Year Research-status Report
紫外電気化学発光素子の開発とマイクロ化学分析用面光源への応用
Project/Area Number |
21K14170
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
笠原 崇史 法政大学, 理工学部, 准教授 (10707714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 紫外光 / 電気化学発光 / ホスト・ゲスト / 電子移動反応 / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、紫外電気化学発光(UV-ECL)溶液の開発を光物理および酸化還元特性の観点から追究し、さらに当該溶液の発光特性を最大限に引き出すマイクロ流体ECLデバイスを微細加工技術により構築することである。 令和4年度はまず、深青色発光を示すアントラセン誘導体(TBADN)をホストとした淡青色ECLデバイスならびに近紫外発光を示すフルオレン誘導体の発光特性の評価を進めた。その考察過程で、励起状態のホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動機構の他に、ホスト分子およびゲスト分子のラジカルイオン間の電子移動反応により、励起状態のゲスト分子が生成される可能性があることに気づいた。これまでのホスト-ゲストECL溶液では、有機ELの発光層を参考に、ゲスト分子のHOMO/LUMO準位が、ホスト分子のHOMO/LUMO準位の内側に位置する材料を選択してきた。令和4年度では新たに、ECLで最も研究されている分子の一つである、黄色発光を示すテトラセン誘導体(ルブレン)溶液に、ルブレンより酸化しやすく且つ還元しにくいワイドエネルギーギャップの分子(ジスチリルベンゼン誘導体)を発光補助ドーパントとして添加し、当該溶液の発光特性をマイクロ流体デバイスにより評価した。その結果、ルブレンの発光特性を飛躍的に向上できることが明らかになった。電流効率はこれまで報告されているもので最高値(4.50 cd/A)となり、デバイス寿命も補助ドーパントを添加していないものに比べ16倍ほど延びることが観測された。以上の結果から、ラジカルアニオンとラジカルカチオンの生成バランスを改善する異種分子混合溶液も、ECLの高輝度化・高効率化に有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、近紫外材料に加え、様々な有機発光性分子の酸化還元特性を解析してきた。そして、ラジカルアニオンとラジカルカチオンの生成バランスを改善するために、異種発光性分子を溶解した新たなECL溶液を検討した結果、ルブレンのECL性能を飛躍的に向上させることに成功した。以上から、当初の計画以上に進展していると捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、補助ドーパントを用いたECL溶液が緑色、青色など、よりエネルギーギャップの大きい発光性分子に適用可能か検証する。
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