2023 Fiscal Year Annual Research Report
Super mode-rich locomotion: how animals navigate unpredictable environments
Project/Area Number |
21K14177
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安井 浩太郎 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (70876739)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 適応的運動知能 / 分散・中枢融合制御 / 局所センサフィードバック / 自律性 / ムカデ / 脳 / 食道下神経節 / ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は,無限定な環境変化に対して,きわめて多様な運動戦略を自律的に生み出すことで,タフに動き続ける運動知能を有する.この自律的な状況判断にもとづく多様な振る舞いの発現原理を理解するためには,脳などが担う上位の中枢制御が,どのように下位の自律分散制御系と相互に連関し合理的な運動戦略を生み出しているのかを捉える必要がある.本研究では,比較的原初的な神経系しか持たないにも関わらず超多様に振る舞うムカデをモデル生物として,そのロコモーションに内在する分散・中枢融合制御の本質を,行動観察実験,数理モデリング,シミュレーション・ロボット実験により構成論的に解き明かすことを目的とした.
以下,最終年度の成果について報告する.まず本年度は,上位中枢である脳と食道下神経節を段階的に切除した際の行動変化について計測データの解析を進めた.その結果,1)食道下神経節は高速歩行時や遊泳時の胴体の屈曲運動に対して抑制性の働きを持っていること,2)脳は食道下神経節を抑制することで胴体の屈曲運動の強度を制御している可能性,また,3)遊泳時の脚の折りたたみは,脳と食道下神経節の双方からの信号により制御されていることを見出すことができた.数理モデリングにおいては,上位中枢制御に関するこれらの新規の知見を,これまで構築してきた下位の自律分散的な運動制御則と統合することを試みた.その結果,シミュレーション実験において,上位中枢からの少数の制御信号の入力を変化させるだけで,環境変化に応じた歩行・遊泳間の遷移や,歩行速度に応じた脚・胴体間協調運動を再現することに成功した.このように状況依存的に身体協調運動を多様かつ自律的に変化させることのできる運動制御モデルは,少なくともムカデに関しては世界初であり,他の動物種に関する研究事例を含めても極めて優位性かつ新規性の高いものである.
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