2021 Fiscal Year Research-status Report
ワイドギャップ半導体における衝突イオン化現象の理論研究
Project/Area Number |
21K14195
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 一 大阪大学, 工学研究科, 助教 (40853346)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モンテカルロ / 高電界 / 衝突イオン化 / ワイドギャップ半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高耐圧パワーデバイス材料として期待されている炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウムなどのワイドギャップ半導体に関して、衝突イオン化係数を理論的に検討することを目的としている。 2021年度は、まず、フルバンドモンテカルロ法により、解析的なバンド構造・散乱レートを用いて高電界印加時のキャリア輸送を計算し、キャリアのドリフト速度や衝突イオン化係数の振る舞いを解析した。この際、単に特定の物質を仮定するのではなく、有効質量やブリルアンゾーン幅などのバンド構造のパラメータや散乱レートを変化させた計算を行い、バンド構造や散乱レートが衝突イオン化係数に与える影響を調べた。その結果、バンド構造における平均的な群速度が、衝突イオン化係数を決定する重要な要素であることを示した。また、通常キャリアの運動を阻害し衝突イオン化係数を低下させる、フォノンによるキャリア散乱が、場合によっては、キャリアの高エネルギーバンドへの分布を促進し、衝突イオン化係数を増大させる場合があることを示し、そのメカニズムを詳細に検討した。 また、各種ワイドギャップ半導体における衝突イオン化係数の系統的比較へ向けて、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムのバンド構造の経験的強束縛近似法による計算を行った。この際、酸化ガリウムにおいては、強束縛近似によりバンド構造を計算するための独自のモデルおよびパラメータを構築した。また、窒化ガリウムに関して、バンド構造の歪に対する依存性の解析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、まず、各種ワイドギャップ半導体における衝突イオン化係数の計算へ向けて、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムのバンド構造の計算を行った。この際、酸化ガリウムに関するパラメータの作成において困難があったが、モデルを検討・改良し、ある程度満足のいくパラメータを作成することができた。 また、解析的なバンド構造を仮定したモデルを用いて、フルバンドモンテカルロ法によりバンド構造と散乱レートに対する衝突イオン化係数の依存性を解析した。これらについて物理的考察を深め、今後、実材料における衝突イオン化係数を議論する際の指針となる知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究で構築した手法に基づいて計算した、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムなどのワイドギャップ半導体のバンド構造を用いて、各材料におけるドリフト速度や衝突イオン化係数といった高電界キャリア輸送特性の計算を進めていく。また、それと並行して、散乱過程の追加や、自由走行中のキャリアのバンド間トンネルの考慮など、フルバンドモンテカルロ法のプログラムの機能拡張も進める予定である。これらにより、様々な材料における衝突イオン化係数を計算し、2021年度に解析的なバンド構造を用いて得た知見と比較しつつ、衝突イオン化係数の振る舞いを議論する。
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Causes of Carryover |
計算サーバの購入を予定していたが、大学設備の使用、および共同研究先の設備の遠隔利用が可能になったため、購入の必要がなくなった。 また、新型コロナウイルスの影響により、出張の中止を余儀なくされたため、旅費の支出がなかった。 これらによって生じた次年度使用額は、酸化ガリウムおよび窒化ガリウムにおける高電界キャリア輸送シミュレーションのために、専用で別途計算サーバの購入が望ましい状態であるため、その購入経費に充てることとする。
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Research Products
(1 results)