2023 Fiscal Year Annual Research Report
温度可変ラマン分光法によるSiGe混晶の微視的な熱伝導機構解明に関する研究
Project/Area Number |
21K14201
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
横川 凌 明治大学, 理工学部, 助教 (10880619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / ナノ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコンゲルマニウム(SiGe)混晶の微小領域における温度測定を確立すべく、フォノンエネルギーを直接観測することができるラマン分光法による温度評価を実施した。具体的には高フォノンエネルギー(ラマンシフト)分解能を有する顕微ラマン分光装置を用い、SiGeラマンスペクトルの温度依存性の取得を試みた。 ラマンシフトと温度の関係(dω/dT)を高精度に得るため、前年度ではチョクラルスキーおよび飽和溶融帯移動法で作製された高品質単結晶バルクSiGeを用い、室温から300℃の範囲でdω/dTを導出した。結果、dω/dTは線形関係を有し、温度上昇に伴いSiGeのラマンスペクトルが低エネルギー(低波数)側にシフトすることを確認した。SiGeのラマンスペクトルは主にSi-Si、Si-Ge、Ge-Ge振動モードに分類することができ、どのモードにおいてもdω/dTはGe組成に概ね依存せず、各振動モード特有の一定値を有することを明らかにした。 今年度は前年度に導出したSiGeのdω/dTとレーザパワー掃引ラマン分光法を組み合わせることで、ラマンスペクトルからSiGe微細構造(ナノワイヤ、ナノドット)の温度測定を検討した。一例として高Ge組成SiGeナノワイヤを測定した結果、レーザパワー上昇に伴いラマンスペクトルが低波数側にシフトしていることが確認された。このラマンスペクトルの振舞いは、レーザから誘起される局所加熱によって試料内の温度が上昇し、非調和振動が支配的になったことによるシフトだと考えられる。以上より、SiGeラマンスペクトルを適切に用いることで微細構造を有したSiGe混晶の熱伝導特性評価に有効であると考えている。
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