2021 Fiscal Year Research-status Report
人間の感覚に影響を与えずに動作可能な圧力センサーの開発
Project/Area Number |
21K14204
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 成薫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80873132)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 圧力センサ / スキンセンサ / 電界紡糸法 / 皮膚感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、人間の感覚に影響を与えずに動作可能な圧力センサーの開発を目的とし、人間の本来の行動や動作を正確に計測する手法を確立する。具体的には、ナノサイズのメッシュ構造(ナノメッシュ)を利用する容量式圧力センサーを開発し、センサーを皮膚に貼り付けた状態で人間の感覚に及ぼす影響を除去する。非常に薄いナノメッシュ保護層の積層技術を確立し、同時に皮膚で動作する際における機械的耐久性を確保する。本年度は、電界紡糸法にて製造するナノファイバシートを多層化することで容量型圧力センサーとして使用できることを確かめた。電極として、水溶性ポリマー(ポリビニルアルコール)のナノファイバの上に熱蒸着した薄膜金、絶縁膜としてポリウレタンナノファイバシートを用いた。またポリウレタンナノファイバの周りにパリレン高分子膜をコートすることで、圧力センサーの感度を劇的に向上し、ポリウレタンのみの中間層の場合の1.0%の容量変化(1 kPa当たり)、を14.1倍向上することに成功した。さらに、18名の被験者に対して、感覚への影響の評価試験を実施した。手袋などを装着し皮膚感覚が鈍くなると、指の力を正確に制御できなくなる。そのため、モノを持ち上げたり保持したりする際の把持力は、皮膚感覚が鈍くなるのに伴って大きくなる。この原理を利用して、極薄のナノメッシュ圧力センサーを指先に貼り付けた場合と貼り付けていない場合について、モノを持ち上げたり保持したりする際の把持力を比較した。その結果、スキン圧力センサーを指先に貼り付けてもモノを把持する力は上昇せず、皮膚感覚を維持できることを確かめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、人間の感覚に影響を与えずに動作可能な圧力センサーの開発を目的としている。今年度は、電界紡糸法によって形成するナノメッシュ構造のセンサーの製造法を確立した。さらに、作製したセンサーを貼り付けた際の評価手法を確立し、実際に、装着による皮膚感覚への擾乱なく動作可能な圧力センサーを開発することに成功しており、提案課題の目標を達成することに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、装着した際の機械的耐久性を確保するための研究を進める。皮膚のように形状が変形する対象に装着して使用するためには、皮膚が変形した際に追随すると共に、変形によるセンサーとしての特性変化を最小化することが重要である。さらに、指などに貼って、様々なものに触れた際の摩擦やせん断応力に対する機械的耐久性を有する必要がある。来年度は、センサーの低感作性を維持しつつ、機械的耐久性を達成するために、非常に薄いポリウレタンナノメッシュシートによる保護膜形成を検討する。
|
Causes of Carryover |
今年度は、できるだけ大学の共用設備と材料を使用したため、次年度使用額が生じた。一方で、センサの均一性を向上するために、専用の製造設備と保管機器を確保する必要があることがわかった。来年度は、本課題専用の設備・機器を購入することで、センサの精度・高効率を進める。
|