2021 Fiscal Year Research-status Report
土木・建設現場の無人化のための複数建機の協調による遠隔作業システム
Project/Area Number |
21K14225
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 浩光 千葉工業大学, 先進工学部, 准教授 (30781215)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 建機の知能化 / 建機による協調作業 / 現場の可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題「土木・建設現場の無人化のための複数建機の協調による遠隔作業システム」では,施工現場を無人化し高効率化するためのシステム構築を目指している. 特に,施工現場での作業において必要不可欠となる「複数建機の協調作業」に焦点を当て,主に 1)複数建機の移動のための位置姿勢推定,2)掘削作業における周囲状況の俯瞰のための全方位広域センシング,3)複数建機による協調作業(積み込み)のためのモニタリング・可視化の機能を有する統合的なシステムの構築を目指し,3年間の実施期間で建設機械の実機を用いた性能検証までを行う予定である. まず本課題では,複数建機の協調作業の具体的な例として実現場で自動化の需要の高い土砂積み込み作業を対象と定めた.土砂積み込み作業は,油圧ショベルとダンプトラックの連携により達成され,現場で実施される作業の大半を占める重要な作業である.初年度である2021年度は,土砂積み込み作業を例に,1)における「ダンプトラックのリアルタイム位置姿勢推定」と,3)における「土砂積み込み時の移動土砂量のモニタリングとダンプ荷台内の積載土砂量推定」について取り組んだ.それぞれのサブ課題に対して,基礎的な手法を提案し,施工現場を想定した環境で実建機を用いた検証実験を行った. それらの成果は,第39回 日本ロボット学会学術講演会(RSJ2021)や第22回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2021)で口頭発表し,特に3)に関するダンプ荷台内の積載土砂量推定に関しては,日本ロボット学会誌の学術論文としてまとめ,2022年6月号の掲載が決定している.研究はおおむね順調に進展できており,次年度以降は今年度までの取り組みの発展と対外的な発表,および他のサブ課題に関する検討を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には,まず具体的な問題設定を行った.本研究課題で扱う施工作業を,自動化の需要が高く重要な作業である土砂積み込み作業と定めた.土砂積み込み作業に関しては,油圧ショベルが土壌を掘削し生じた土砂をダンプトラックに積み込み運搬するという一連のオペレーションを自動化するための技術が求められている. その上で,サブ課題である,1)複数建機の移動のための位置姿勢推定,3)複数建機による協調作業(積み込み)のためのモニタリング・可視化の機能を有する統合的なシステムの構築に取り組んだ.現在までに,各サブ課題について基礎的な方法論を提案し,施工現場を想定した環境で実建機を用いた検証実験を行うことで,そのアプローチの有効性を確認した. 具体的には,1)において施工現場に待機している油圧ショベルに対して進入してくるダンプトラックの位置姿勢を正確に認識する方法論を提案した.油圧ショベル周囲の色付き点群を取得可能な3次元LiDARとRGBカメラを統合したシステムを構築し,画像認識と形状フィッティングから遠近両方の距離からダンプトラックの位置姿勢を計測した.作業中に土砂の積み溢しを生じないような位置決め精度の要求仕様を独自に策定し,実機実験でその精度を満たすことを確認した.その成果をまとめ,2023年初旬に開催される国際学会へ投稿予定である. 3)においては,ダンプトラックへの積載を効率化するためにダンプトラック荷台内の土砂形状を測定する手法を提案した.ここで,油圧ショベルからの計測においては,荷台のあおりや土砂自体による遮蔽の回避は困難である.これらセンシングにおける欠損部に関して,時系列の作業データや土砂の性質から形状を補完し計測精度を向上させる手法を提案した.その成果は,日本ロボット学会誌の学術論文としてまとめ,掲載が決定している. 以上の様に,初年度の研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は,2021年度までの成果をまとめ対外的発表するとともに,サブ課題 2)掘削作業における周囲状況の俯瞰のための全方位広域センシング,と 3)複数建機による協調作業(積み込み)のためのモニタリング・可視化の研究を進展させる. 2)における建機周囲のモニタリング可視化は,建機を無人化する上で必須の技術である.特に本研究課題で焦点を当てている油圧ショベルとダンプトラックによる連携作業である土砂積み込み作業においては,油圧ショベルの周囲環境を建機に搭載したセンサ群から得られる情報のみで実現することが重要となる.その基礎的な検討を行い,実機検証を行うことを目指す. 3)においては掘削した土砂総量を掘削中にリアルタイムで知ることが重要となる.そのために,掘削から積み込みまでの土砂移動中にバケット内の土砂をリアルタイムでモニタリングするアプローチを検討する.特に土砂移動中にセンサと土砂の相対位置姿勢が変化することを利用し,センシングの分解能を上げ体積推定の精度を向上させる手法を提案する.複数のセンサ情報をリアルタイムで統合し,定量的な扱いと可視化を可能とする方法論の基礎検討を行い,実機検証を行うことを目指す.
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Causes of Carryover |
初年度は,新型ウィルス蔓延により十分な回数の実機実験を遂行できない可能性が生じ,また合わせて半導体不足などを理由に物品の調達に関しても,納期の遅延や価格の高騰など,当初の予定通りの予算執行が困難な状況が続いた.そのため,初年度は計測アルゴリズムに関する基礎的な検討を重点的に実施し,センサなど高額備品や多額の開発費を要するシステム構築は次年度以降に見送った. 次年度の予算が使用可能になり次第,上記の状況を十分に考慮した上で適切なタイミングで物品の調達およびシステム構築を行っていく予定である.
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