2021 Fiscal Year Research-status Report
なぜそこに塩が付着するのか?塩分粒子挙動の物理から考える橋梁の腐食環境
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21K14232
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野口 恭平 京都大学, 工学研究科, 助教 (70802685)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 飛来塩分 / 付着塩分 / 維持管理 / 数値流体解析 / 風洞実験 / 剥離剪断層 / 表面圧力 / 変動圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
矩形断面周りの塩分粒子の輸送過程について,数値流体解析および風洞実験を利用して検討を行った.具体的には,矩形断面まわりの時々刻々と変化する流れを数値計算によって算出し,その中を移動する粒子の運動と壁面への付着量を観察した.その結果,断面辺長比によらず各面の端部で付着量が大きいが,その理由は面によって異なることが判明した.特に,粒子の輸送と付着に対しては剥離剪断層の周期的な運動が重要であり,渦放出1周期の中で生じる剥離剪断層の壁面への接近および離脱に応じて付着しやすい部位が変化することが明らかとなった.このとき,風洞を利用した流れの可視化実験に基づいて断面周りの風速分布を算出し,数値計算から得られた流れ場と比較することで,流れ場計算結果の妥当性を確認している. 一方,粒子飛散解析を行うことなく断面への付着量や付着分布を評価する目的で,表面圧力に基づく付着量推定手法について検討を行った.付着量も表面圧力も断面周りに形成される流れ場の影響を受けているので,付着量と表面圧力の間にも有意な関係があると思われることが検討を行った理由である.表面圧力に関係する様々な物理量について付着量や付着分布との相関を調べたところ,表面圧力の時刻歴の標準偏差である変動圧力係数,および平均圧力の周方向勾配の絶対値の2つが,付着量を良好に予測することができる可能性が示された.両物理量とも時間的または空間的に矩形断面表面近傍の局所的な流れの変化を表しているためと考えられる.ただし,表面圧力と付着量の関係は粒子の流れへの追従性を表すストークス数とも密接に関係しており,留意する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
矩形断面周りの流れ場特性とそれに対応した粒子飛散特性について,数値流体解析と風洞実験の両面から取り組み,局所的な粒子輸送機構を明らかにすることができた.複数の辺長比の矩形断面について共通点や異なる点を細かく観察することができ,十分な成果が得られたと考えている.上述の研究に注力したため粒子が壁面に衝突する際の挙動に関する検討はやや遅れているが,全体としては順調に進展していると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
2種類の辺長比の矩形断面について検討を行ったので,粒子の飛散特性についてさらなる知見を得ることを目的に,他の断面辺長比の矩形断面も対象に一連の検討を行う.また,矩形断面に他の小さな矩形断面を接続して得られる複雑な形状を対象とすることで,矩形断面まわりの粒子飛散特性との共通点や相違点を明らかにし,橋梁断面のようなさらに複雑な形状を検討するための情報収集に努める.また,表面圧力に基づいて付着量・付着分布の推定手法についても,複雑形状への適用可能性を明らかにする.併せて,粒子が表面に衝突する際の挙動に関する検討も行い,現在の評価手法が適用できる環境条件や構造条件に関する知見を得る.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため学会発表がオンライン開催となり出張を取りやめたこと,一部の実験用模型は自作を試みたこと,およびワークステーション購入予算をスーパーコンピュータの資源確保に集中する方針へと変更したことから,次年度使用額が生じた.計算環境の改善・充実を中心に利用したいと考えている.
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Research Products
(2 results)