2021 Fiscal Year Research-status Report
浸透履歴を考慮した盛土構造物の劣化進行と巨視的応答に関する理論体系の構築
Project/Area Number |
21K14244
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
中島 晃司 近畿大学, 理工学部, 助教 (30846051)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 河川堤防 / 内部侵食 / X線CT / インデックスマッチング法 / PIV / 電気探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,盛土構造物である河川堤防を研究対象として取り上げ,浸透履歴に着目した堤体の劣化進行を評価,安全性低下に関する理論体系の構築を目的としている. 今年度は基礎的な実験として,要素供試体および河川盛土模型に対する透水実験を実施した. 要素実験では,相対密度の異なる要素供試体に対して動水勾配を変化させた透水実験を行った.そして,透水時の排水濁度および透水係数の経時変化を調査し,内部侵食の進行を評価した.その結果,動水勾配や透水履歴によって内部侵食の進行のようすが異なることが確認された.また,水理条件よりも相対密度の方が内部侵食に大きく影響することが示唆された.さらに供試体のX線CT画像を用いて,透水に伴う土の不均質性の可視化を試みた.供試体作製時に密度のばらつきが生じることで,潜在的に密度が緩いと考えられる突固め層内で内部侵食が卓越する様子が観察された.内部侵食の可視化実験として,屈折率調合法により作製した透明地盤模型を用いた検討も行った.移動・流出する細粒分をPIV画像解析で追跡することにより,内部侵食の進行を可視化できる可能性を見出した. 模型実験では,地下水の浸潤挙動把握に対する電気探査の適用性を評価するために,水道水および塩水を用いて透水実験を行った.電気探査で得られる比抵抗分布から浸潤面を同定することは困難であったが,浸潤面以浅の水分挙動や法面からの漏水を把握する上で電気探査の有用性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は透水実験で使用する要素試験装置および模型土槽を作製し,次年度に向けた基礎実験データを収集することが大きな目的であった. 要素実験では,内部侵食による土の不均質化をどのように評価するかということが課題であったが,供試体の平均的な変化に対しては排水濁度や透水係数の変化から,土内部の局所的な変化に対してはX線CT画像解析やPIV解析から評価できることを確認した.しかし,局所的な変化に対しては,定量的な評価までには至っておらず,次年度の検討項目として残されている. 模型実験では,地下水の浸潤挙動を把握するための検討が課題であり,電気探査の適用性を評価した.電気探査では浸潤面を正確に同定することはできないものの,間隙水圧計などでは得られない水分挙動を把握することができたため,次年度以降の実験では,各測定器の特徴を活かして調査できると考えられる. 以上今年度は,次年度以降も継続して行っていく実験のプラットフォームを整備し,河川堤防の劣化進行に関して評価すべき項目をある程度整理できたといえるため,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
要素実験では,繰返しの透水履歴による内部侵食の進行を可視化し,その際の土と水の相互関係について定量的な評価を試みる.河川堤防の模型実験では,河川の洪水と降雨の浸透が個々に作用したケースや同時に作用したケースなど,ケーススタディとして実際を想定した実験条件のもと透水実験を実施していく.そして,浸透履歴が堤体土の経年変化に及ぼす影響を体系化する.さらに,有限要素解析モデルを作製し,模型実験の再現解析も進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
購入を予定していた備品を既存のもので代用できたため,当初予定していたよりも支出額が少なくなった.また,新型コロナウイルス感染拡大にともない,旅費を使用する機会がなかった.以上の理由により次年度使用額が生じた.新たな実験に必要な備品の購入に充てる予定である.
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