2022 Fiscal Year Research-status Report
次世代交通管制のためのリアルタイム交通状態推定手法の開発
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21K14266
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 昌平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00899247)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 交通状態推定 / kinematic wave理論 / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模な道路ネットワーク上の交通状態をリアルタイムに推定することを研究目的とし,2022年度には機械学習と交通流理論を組み合わせたネットワークの交通状態推定手法について開発を進めた.具体的には,代表的なマクロ交通流理論の一つであるkinematic wave理論を活用し,ニューラルネットワークによる推定・予測を補正する方法論の開発を行なった.2021年度に開発したニューラルネットワークに基づく方法論のように,観測データに基づいて過去の渋滞発生パターンを学習・予測する機能は有用であるが,非再起的な渋滞や災害時・施策実施時のような過去に観測されたことのない交通状態を予測することは困難であることが課題であった.本研究では,ニューラルネットワークの学習においてkinematic wave理論のモデル式に関する項を追加することにより,過去に観測されたことのない状態についても交通流理論に基づいて表現可能なモデルとして拡張する方法論を構築した.これにより,逐次得られる観測データに対するモデルの学習の効率化が期待でき,また観測データが得られない状況に対しても交通流理論に基づく推定・予測結果を出力できる堅牢なモデルとなることが期待できる. また2021年度に開発した動的なネットワーク表現と機械学習を用いた交通状態推定手法に関する研究成果について,国際学会や学術論文誌で発表を行い,賞を受賞するなど一定の評価を得た. 以上のように,大規模ネットワーク上の交通状態をリアルタイムに推定する目的に対して一定の実績が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で挙げていた3つの要件である(A) 空間統計学を用いた動的なネットワーク表現,(B) 交通流理論および機械学習を用いた交通状態推定手法の開発,(C) ベイズ統計学を用いた観測データのリアルタイム解析手法の開発のうち,2022年度は(B)の内容について中心的に取り組んだ.特筆すべきは,当初計画では交通流理論と機械学習を用いた方法論をそれぞれ独立に開発し,(C)の方法論の開発の中でそれらを組み合わせることを想定していたが,ニューラルネットワークと交通流理論を組み合わせた方法論を開発できたことにより,この部分の目的を達成できたことである.ベイズ統計学の考えに基づいて観測結果とモデルを馴染ませる構造をより詳細化していく必要はあるが,2022年度に開発した方法論はこの点とも親和性の高いモデルになっていると考察している.よって最終年度は2021年度に開発したネットワーク表現と,2022年度に開発した交通流理論およびニューラルネットワークを組み合わせた交通状態推定手法を活用し,ネットワークを対象としたリアルタイムな交通状態推定を実現させるフレームワークの開発及び実データによる検証に集中して注力できるため,当初計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べた通り,これまでに開発したネットワーク表現手法および,交通流理論と機械学習を組み合わせた交通状態推定手法を活用することで,ネットワークの交通状態をリアルタイムに推定し,逐次的に学習するモデルは実現できると想定している.今後の研究推進方針として,これらの方法論を一つのフレームワークに統合し,実観測データを入力としてネットワークの交通状態推定を高速に行えるかどうかの検証を行うことが考えられる.また新たな観測データに基づいてベイズ統計学によりパラメータを更新し,結果の予測精度を高める機能について,実社会への実装を踏まえてより精緻に検証し,本研究の目標である次世代交通管制の実現可能性を定量的に評価することまで精力的に進めたい.
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Causes of Carryover |
2022年度に採択された国際ジャーナルのオープンアクセス料金がドル高の影響で想定以上に高額になり,予算の前倒し申請を行なったが,そのうちの323円を使い切るに至らなかった.次年度の物品購入と併せて使用させていただく計画である.
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