2021 Fiscal Year Research-status Report
水環境におけるESBL産生遺伝子の伝達機構の解明と環境保存性の評価
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21K14274
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西山 正晃 山形大学, 農学部, 准教授 (10802928)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌科細菌 / ESBL / プラスミド / PBRT / 形質転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に実施した研究実績として、(1) 下水処理場から分離したESBL産生菌の疫学調査と耐性遺伝子の探索、(2) ESBL産生耐性遺伝子を対象とした薬剤耐性の保持性と伝達性の評価を行った。 実施項目(1)では、都市下水からESBL産生菌の選択培地を用いて分離した腸内細菌科細菌を対象に疫学調査を実施した。モニタリングにより分離・同定されたESBL産生腸内細菌科細菌227株は以下の菌種に分類された;Klebsiella:134株、Kluyvera:58株、Serratia:8株、Citrobacter:12株、Enterobacter:15株。これらの菌株についてPCR法によってβラクタマーゼの分類を行った結果、ClassAに分類されるblaCTX-Mグループがどの菌種からも最も高い割合で検出された。これらの耐性遺伝子の検出結果とプラスミドの関係性を明らかにするために、プラスミドの特徴をIncグループの分類を行ったところ、227株の腸内細菌科細菌のうち172株はいずれかのInc型に分類され、IncFに分類されるIncFllK(35.4%)とIncFIB KN(61.6%)の検出率が高かった。また、IncFグループと関連があるIncFllKとIncFIB KNは異なる4種類の腸内細菌科細菌から検出されおり,広範囲の宿主にこのInc型のプラスミドが伝播していると考えられる。 実施項目(2)では、実施項目(1)の結果を踏まえblaCTX-Mグループに着目して、耐性遺伝子の取り込みを評価する手法の検討を行った。異なるblaCTX-Mグループ(blaCTX-M group-1、blaCTX-M group-2、blaCTX-M group-9)を保有する標準株からプラスミドと耐性遺伝子を抽出し、液体培地中で耐性遺伝子の取り込みが発生するかを調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書の内容から2年計画のうち半分を終了しており,これまでの研究実績の実施内容から概ね研究は進捗していると考えている。これまでの実績として、都市下水から分離したESBL産生腸内細菌科細菌について、菌種同定、薬剤感受性試験、βラクタマーゼやIncグループの型別などの特徴づけを行った。結果の一部は既に公表している状況にある。 実施項目(2)では、blaCTX-Mグループに着目して、耐性遺伝子の取り込みを評価する手法を検討している。実施項目(1)の結果から、耐性遺伝子の取り込みとプラスミドの保持性の評価に使用する菌株と対象遺伝子を選定した。評価実験を進める中で、in vitroで耐性遺伝子の取り込みの現象は把握したものの、定量的な評価を行うための検証ができていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
実施項目(1)では、特徴づけしたESBL腸内細菌科細菌に関して、当初予定していた全ゲノム解析を1から3株程度行い、core-genome MLST等を実施することで国内外の菌株との遺伝的な違いを明らかにする。 実施項目(2)では、考案した耐性遺伝子の取り込みの評価手法によって、定量的なデータを蓄積する予定である。また、プラスミドの保持性、伝達性の評価に関する実験も並行して行う予定である。
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Causes of Carryover |
耐性遺伝子の取り込みの評価に関する実験が当初の計画より遅れたため、次年度へ一部繰り越す必要が生じた。
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