2021 Fiscal Year Research-status Report
Life Cycle Regional Design for Realizing Net Zero Energy Buildings Considering Urban Renewal
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21K14276
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竇 毅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (10851107)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 都市更新 / ゼロエネルギー / ライフサイクルデザイン / 技術評価 / コンパクトシティ / 脱炭素社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究では、北九州市を対象地域に、最新のZENRIN建物ポイントデータを使用し、建物の立地情報からエネルギー需要の分布を推計できた。その上で、過去の建物更新(形状変更と立地転換)の歴史が分かる4次元地理情報システム(4d-GIS)により、建物を属性にて15分類にして寿命曲線を推計した上で、同市の立地適正化計画に従って将来の人口集住化を考慮した、建物更新に伴って建物分布の変化を推計した。さらに、建物の更新に関連する耐久化対策、省エネルギー化対策、建物木質化など対策をシミュレーションに反映し、2050年まで建築部門において物質投入量とエネルギー消費量の変化を推計した。 結果では、立地適正化計画による人口集住化の影響及び各対策の相乗相殺関係が分かった。まず、人口減少は全体的に建物の延床面積、物質投入とエネルギー消費を抑制した。それに、人口の集住化は建物の構造変化に影響が薄く、建物の立地転換への影響が著しいことで、物質とエネルギーの消費に直接な関係が弱いと分かった。ところが、単なる建物の耐久化及び戸建住宅の増加がエネルギー需要の低下を緩め、断熱性向上など省エネルギー対策とはトレードオフ効果が見えた。すべての影響要因が相殺した後、北九州市の建築エネルギー需要は将来30年間に20%程度の削減ができると予想された。エネルギー供給の面で、エネルギー需要が全体的に下がる一方、人口の集住化によって居住誘導区域内の熱需要密度がある程度で維持され、将来にも地域や地点エネルギー供給システムの導入可能性を有していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の影響で、昨年度でも国内外の学会開催が少なくなり、緊急事態宣言で研究交流のチャンスも少なくなった。もっとも、長期間の在宅勤務や外出控えが原因で、心身ともにストレスが貯まり、研究への集中力がかなり低下していた。一方、2020年度後半から、世界中カーボンニュートラルがブームになり、日本でもカーボンニュートラル宣言やグリーン成長戦略を挙げ、従来より野心的な政策を講じるところにあった。しかし、第5次エネルギー基本計画といった各分野政策の目標設定を巡り、依然として疑問と矛盾が多いため、本研究のシナリオ分析に政策の不確実性を与えた。今年度は、カーボンニュートラルに向けた各分野の政策目標の定着を期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果を受け、今年度はシミュレーションと評価モデルをさらに改善し、2021年度に世界中ブームになったカーボンニュートラル社会への転換の動き、特にゼロエネルギー建築の普及加速をシナリオ設定に反映し、ゼロエネルギー建築に関してもっと野心的な将来ビジョンを示したいと考えている。具体的に3つの課題に取り組みたい。 (1)建築のゼロエネルギー化に向け、もっと野心的なの性能改善と普及目標をシミュレーションに入れる。昨年度のシナリオには新築の建築のみにゼロエネルギー化対策を導入する設定で、建築部門全体のゼロエネルギー化がそれほど進まない結果となった。今年度は、既存の建築にゼロエネルギー化の対策を導入する条件で、野心的なシナリオにて2050年まで建築部門の省エネルギー化ポテンシャルを評価する。 (2)昨年度に開発したモデルでは、北九州市の立地適正化計画に従い、人口が居住誘導区域に集住する人数を地域魅力度でメッシュに案分するという工学的手法を使うため、土地利用や都市経済学での根拠が薄かった。応用地域経済学モデルなど既往の都市シミュレーションモデルとの結合可能性、特に交通インフラが人口の集住化に与える影響をもっと論理的に反映できるモデルへの改造を試みる。 (3)昨年度に開発したモデルでは、建築部門の最終エネルギー需要を出力としたので、エネルギー供給システムの設計は考慮せず、一次エネルギー投入量の計算ができなかった。建築部門のゼロエネルギー化がどれほどカーボンニュートラルの目標達成に寄与されるか、エネルギー供給システムの設計を評価モデルに結合し、エネルギーの投入量を出力とした統合モデルを適用する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行が2021年度にも弱まれず、国内外学会の開催が相次いで中止となり、企業や専門家への調査訪問計画も執行されないため、旅費、謝金等の使用がなかった。一方、北九州市を対象地域に建物構造・築年数データ及びモバイル空間統計データの購入総額は初年度の交付額より上回り、今年度の予算額を合算してからデータ購入を再検討する予定である。次年度では、データ購入費の他に、シミュレーションモデルの開発によって計算能力のあるワークステーションの購入、学会参加費、論文投稿向けの英文校閲費など用途に予算を使用すると考えている。
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