2021 Fiscal Year Research-status Report
強力な生物攪拌者に着目した順応的管理の実践的研究~ニホンスナモグリは悪者か?~
Project/Area Number |
21K14279
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
東 和之 阿南工業高等専門学校, 技術部, 技術専門職員 (40623260)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工海浜 / 生物攪拌 / 野外実験 / ニホンスナモグリ / 順応的管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,徳島市沖洲地区にある人工海浜において,ニホンスナモグリ(以下スナモグリ)の分布状況ならびに底生生物相を把握するために夏季を中心に調査を実施した.また,沖洲人工海浜では当初の予定には無かった県による覆砂事業が実施されたことから,覆砂がスナモグリや他の底生生物に与える影響についても調査した. 沖洲人工海浜では5年前の調査と比較してスナモグリの生息域が海浜全体へと拡大していた.優占種はアサリやソトオリガイの二枚貝であったが,成体サイズの個体は確認されなかった.このことから,沖洲人工海浜においてアサリやソトオリガイの加入は行われているものの,それらのほとんどが成長できず死んでしまっていると考えられ,本人工海浜においても既往の研究(玉置2004,Pillay et al.2007など)と同様に,ろ過食の二枚貝に対するスナモグリによる加害が示唆された. しかしながら,オオノガイ科のクシケマスオは成体が確認された.クシケマスオは,スナモグリの巣穴の近辺に生息し,巣穴に水管を開口し採餌することが報告されている.また,モクズガニ科のトリウミアカイソモドキも多く確認されたが,本種もスナモグリの巣穴に共生することが知られている.筆者らの調査で,スナモグリが優占する環境では 沖洲人工海浜と同様の生物相が形成されている事が分かっており,スナモグリが優占している環境では,スナモグリと共生できる種しか個体群を成長させられない可能性がある. 2021年7月に高潮位域の一部に覆砂が実施され,調査地点のうち1か所が覆砂された.その結果,周囲より地盤高が30cmほど高くなり,スナモグリが排除された.覆砂前後で唯一確認されたのはイソシジミであった.イソシジミは 20 cmを超える土砂堆積を想定した実験でも全個体生存していたことが報告されており 覆砂のような攪乱に対して極めて強い耐性を持っていると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りの調査を実施することができ,データを取得することができた.覆砂が実施されていた期間(7月)は調査を実施することが出来なかったが,覆砂が行われたことで結果としてニホンスナモグリの排除区が作られ,ニホンスナモグリ有無での比較検討が行えることとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
ニホンスナモグリの分布状況ならびに,二枚貝に対するネガティブな影響を確認することができた.今後は,ニホンスナモグリが海浜生態系に与えているポジティブな影響を調査していく.具体的には生物攪拌による地中への酸素の供給を調査する.また,巣穴近辺の微量元素分析も実施することで,化学的な視点からもニホンスナモグリの効果を明らかにしていく予定である. 加えて,ニホンスナモグリは地中深くに生息しているため,その定量化には非常に大きな労力を必要とする.そこで,写真撮影によって巣穴を確認するだけでニホンスナモグリの定量化が行えるように調査を実施していく.最終的にはドローンによって広範囲のニホンスナモグリの生息状況が明らかにできるよう研究を進める. 沖洲人工海浜における底生生物調査も引き続き実施し,スナモグリが排除された覆砂域とそれ以外の調査地点との底生生物相の変遷について比較していく.
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Causes of Carryover |
昨年度は新型コロナウイルスのパンデミックのため,学会や打ち合わせ,調査等の出張が全て無くなったため次年度使用額が大きくなった.徐々に学会なども対面形式の所も出てきており,今年度は参加できる所には積極的に参加し,研究成果の報告を行っていく. 今年度分は既に計画している研究計画に沿って使用させて頂く.
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