2023 Fiscal Year Annual Research Report
地震後残留変形低減機構を有する構造物の地震時挙動と設計法構築
Project/Area Number |
21K14291
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小松 真吾 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60845618)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セルフセンタリング / 時刻歴応答解析 / 等価線形化法 / 非線形サイクル数 / 塑性率分布 / 最大塑性率 / 累積塑性変形倍率 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルフセンタリング(SC)構造は,特別な機構を構造物に組み込むことで,地震後の残留変形を低減可能な構造システムで,持続可能な社会の形成に資することができる.本研究はSC構造の設計変数と地震応答の間の物理的繋がりを解明し,その性能設計に必要となる包括的応答評価法を構築することが目的である. 最終年度は,2021, 2022年度に実施した広範な変数下での1質点系モデルの時刻歴応答解析結果より,SC構造の非線形サイクル数と塑性率分布の予測を行った.前者のサイクル数は,地動加速度波形,地動変位波形から両極端な固有周期を持つ系の非線形サイクル数を推定し,それに応答解析結果から経験的に決定した極値を組み合わせることで,地震応答性状を広い固有周期帯にわたり再現できた.後者の分布は,大きい順に並べ替えた塑性率が指数関数で近似できることを指摘し,これに応答解析結果を反映してモデル化した. これらの非線形サイクル数と塑性率分布を用いた,平均等価粘性減衰定数の閉形式解を誘導し,これと応答スペクトル低減,等価速度スペクトルを用いる既往手法とを組み合わせた,SC構造の最大変形予測法を提案した.提案手法によれば,実応答傾向を詳細に考慮せずやや安全側の評価値となる既往手法と比較して,予測精度が改善できることを示した.なお,研究当初は予定していなかった標準的な鋼構造のモデルであるバイリニア(BL)構造への拡張や累積塑性変形倍率の予測も併せて実施し,妥当な精度を示した.研究代表者が知る限り,SC構造の累積塑性変形予測はこれまでに行われていない. 以上で提案した等価線形化法に基づく1質点系の応答評価法を,多質点系の場合に拡張した.提案した多質点系の予測理論は,多質点系モデル各層における最大変形や累積塑性変形を妥当な精度で予測でき,よって本提案手法に基づきSC構造が合理的に設計可能であることを示した.
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