2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14295
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 宮土理 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20732192)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 土蔵 / 左官 / 戸前 / 開口部 / 仕上がり寸法 / 骨組 / 下地 / 施工方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多くの優れた左官技術の盛り込まれた土蔵の出入口(戸前)や開口部の観音扉に着目し、その左官施工法の解明・保存のため、仕上がり寸法の墨出し方法、骨組・下地の組み方、塗り層構成、使用材料を解明することを目的としている。本年度は、実建物の仕上がり寸法の実測調査(東北および北陸の土蔵5件)、および骨組・下地の実測調査(東北の土蔵2件)を実施した。 明治期に出版された左官雛形本等によると、両側の各扉上下 2 箇所に取り付く回転金物(肘鉄)の取付け位置について、完成時の重厚な扉が自重で回転してしまわないための工夫として、下肘鉄より上肘鉄を土蔵本体側に寄せて取り付けるとされている。実建物5件の実測を行ったところ、雛形本に示された上下肘鉄の位置の違いが認められる場合と、そうでない場合とがあった。建築年の新しい土蔵ほど認められる傾向にあり、雛形本に書かれた知見が実施工に浸透する前後で上下肘鉄の取付け位置が変化した可能性が考えられる。今後調査件数を増やして検証する予定である。また、下肘鉄より上肘鉄が土蔵本体側にあった場合については、土蔵本体の壁厚が開口部上部へいくほど小さくなっており、これに伴って掛子(開口部に施される段々状のかみ合わせ)やダキの見込み寸法が上部ほど小さくなるよう調整されていることがわかった。さらに、文献(出牛政雄,昭和55年)に記されている掛子の墨出し方法に照らし、実測した仕上がり寸法から墨出し方法を予測することができた。 次に、東北の土蔵の解体時に保管された戸前・窓の骨組・下地のサンプル3件の実測調査を行ったところ、木柄の組み方、金物の固定方法、回転金物(肘鉄・坪鉄)周辺の金物補強の状況、下地の作製方法と留め付け方を記録することができた。 以上のように、仕上がり寸法の墨出し方法や骨組・下地の組み方について新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通りに実建物の仕上がり寸法の実測調査を行った。また、これに加えて骨組・下地のサンプルを入手することができ、実測調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実建物の仕上がり寸法の実測について、地域や年代の異なる土蔵の調査を実施するとともに、解体予定の土蔵の情報を集め、塗り層の構成、施工方法および材料について分析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに助成金を使用した。本年度の未使用分は次年度分と合わせて調査旅費等に使用する予定である。
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