2022 Fiscal Year Research-status Report
立ち仕事による下肢の疲労からみた床の性能評価方法の確立
Project/Area Number |
21K14296
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福田 眞太郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50781887)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 下肢の疲労 / 床 / 性能評価 / かたさ / 官能検査 / 細胞外水分率 / むくみ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、高齢者施設などの介護の場において、介護者が長時間の立ち仕事を続けたことによる下肢の疲労を訴える事例が増加している。下肢の疲労度合に影響する要因として、建築物床の観点からは床のかたさ,すべり,表面凹凸などが考えられる。特に、靴を脱いで動作することが主である高齢者施設などでは、その影響は大きいと思われる。疲労からみた床の性能の研究についてはいくつか例があるが、いずれも短時間の官能検査による長時間動作を続けた場合の予測に基づいており、実際に長時間動作を実施した際の疲労度合を適切に評価できるかは明らかになっていない。本研究は、長時間立ち仕事を続けた際の下肢の疲労からみた床の性能評価方法を確立することを目的とする。 実施計画では、初年度は下肢の疲労に関する心理学的尺度を構成する予定であったが、感染症対策等の影響で検査員の確保が困難であったため、試料床の選定,製作をはじめ、官能検査を実施する環境の整備を行った。また、身体の疲労に直接影響すると考えられる脚のむくみ度合いを測定可能な試験装置(体成分分析装置InBody570)を購入し、床によって測定結果に有意な差が得られることを確認した。当該年度においては、初年度に整備した検査環境を用いて官能検査を実施し、心理学的尺度を構成することができた。具体的には、主に床のかたさが異なる8種の試料床上で、20名の検査員を対象に、長時間の立ち仕事を模擬した動作の際の疲労に関する官能検査を行った。その結果、身体の疲労には床の違いが有意に寄与していることを明らかにするとともに、長時間の立ち仕事の際の身体の疲労を構成する主な要因が足裏の痛さと下腿の張り感覚であることを明らかにした。また官能検査時には、体成分分析装置InBody570を併用し、下肢の張り感覚に関係がある生理的測定指標である“細胞外水分率”も測定し、官能検査結果との関係について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における感染症対策等の対応に伴う官能検査未実施による実験の遅れはあるものの、当該年度において当初想定したいたよりも早く、かつ多くの官能検査を実施してデータを収集できた。現状の進捗状況から鑑みても、最終年度において本研究の目的である”長時間の立ち仕事による身体の疲労からみた床の性能評価方法の確立”を行うことは容易であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に得られた疲労に関する官能検査結果と、官能検査時に同時に測定した細胞外水分率の関係についてより詳細な検討を行うことで、長時間の立ち仕事による身体の疲労に起因している要因について学術的に明らかにする。また、そのうえで、心理学的尺度ないし細胞外水分率の結果と、既存の床のかたさの性能値と関係を検討することで、長時間の立ち仕事による身体の疲労からみた床の性能評価方法を確立する。
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Causes of Carryover |
当初は官能検査被験者への謝金支出を想定していたが、学生等の無償協力によって支出想定を大幅に下回った。それに伴い、官能検査時に使用する計測機器の購入費等に充当したが、それでも次年度使用額が残ってしまう結果となった。最終年度においては、新たな測定装置の製作をする可能性が高いため、その制作製作費として使用する予定である。
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