2021 Fiscal Year Research-status Report
乾式非構造壁等の被害実態を踏まえた鉄骨支持構造部の構造性能に関する基礎研究
Project/Area Number |
21K14297
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
沖 佑典 国立研究開発法人建築研究所, 建築生産研究グループ, 研究員 (10805328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非構造部材 / 支持構造部 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、地震や台風による強風等でみられた脱落被害事例、建築物の設計情報等から、間仕切壁等の取り付く支持構造部における設計・施工の実態に関する情報の収集を行った。具体的には、①既往の非構造部材等に関する被害調査報告及び国土交通省大臣の公共建築工事標準仕様書等を用いた文献調査、②指定避難所となっている体育館等を抽出した現地調査と図面の閲覧、避難所の指定等を所管する市町の防災担当者との意見交換等による事例収集、の2つの方法によって行った。 ①により、建築工事標準詳細図、地震や台風における被害調査写真から、内装の壁等の上端を軽量鉄骨部材による支持構造部としている事例を収集した。非構造部材の間仕切壁及びその支持構造部については、あらゆる板厚の部材等による多様な構成状況が確認された。また、一部文献調査により、間仕切壁の支持部分として天井がその一つとなりうることが確認されたため、支持構造部を含む次年度以降の部分実験に関する準備を行った。並行して、非構造部材や支持構造部の解析的検討の一環で、間仕切壁が鉄骨骨組に直接接合される試験体に関する振動実験についての数値解析プログラムによる再現を試みた。 一方、②によっては、現地調査を行った指定避難所等の中で、非構造部材が支持構造部を介して支持される例は確認できず、また調査対象における従前の建築図や構造図からは、非構造部材・支持構造部や両者の境界部分に関する構造的配慮等の詳細について表現される例は見当たらなかった。数か所の体育館において耐震改修工事の図面等が確認できたが、市町の担当者によると、今回調査できた建物については、例えば天井はその必要性に鑑み、改修策として吊り材を設けない方法を選択する場合が多かった、とのことであった。実態調査については調査方法を精査し、より一般性の高い支持構造部に関する傾向を引き続き分析していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実態を調査するため、①文献調査、②現地調査と建築図面等の確認、の2つのアプローチにより実施したが、②については、コロナ禍による影響と担当部局の調整が難航し、1件についての実施にとどまった。また、調査した1件の調査により、耐震改修等のタイミングにおいて併せて各部の詳細な検討がなされない限り、非構造部材・支持構造部等に関する構造的配慮等の実態は詳細に示されておらず、図面等で残されていないことが推察された。支持構造部の介在によらない配慮の例が確認されたことは、多様に存在すると思われる支持構造部に関する実例の一つとして有益であったが、次年度以降の実験計画に資する詳細を決定するための一般性を確保する点では不十分であった。支持構造部が介在するような実態の例を徴収する方法については検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
支持構造部を含む実態に合わせた要素試験体を製作し、静的水平載荷実験等の実験を実施する。事例収集においては、既往の建築工事標準詳細図等の文献調査により、間仕切壁の支持構造部に関する詳細が一部示されていることから、この例を中心とした実験計画が見込まれる。なお、引き続き現状の支持構造部の取り扱われ方や構造的配慮の事例収集を行うとともに、文献から抽出される標準的な仕様を踏まえ、今年度の要素実験・解析等に関する検討を進めていく予定である。 また、解析的検討も引き続き実施する。既往の検討において、二次部材(間仕切壁等)が建物の上下床に配置される場合の断面力、変位等の応答について検討されており、この検討を援用しながら、支持構造部により中間部分で剛性が変化するような場合について検討する。
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Causes of Carryover |
実態調査について、現地調査やヒアリングを中心とした調査を当初の計画としていたが、文献調査を中心とした方法に変更したため、旅費や謝金等が当初より生じなかったことが考えられる。
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