2022 Fiscal Year Research-status Report
感染症予防のための大換気量を前提とした空調設備の検討とその最適制御手法の開発
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21K14303
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松尾 智仁 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (30793674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 空気質 / 温熱環境 / CFD / 放射空調 / 超音波加湿器 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの感染予防を目的として、換気が励行されている。これにより、室内の空気質の向上が見込まれる一方で、外気負荷の増加による温熱環境の悪化が懸念される。そこで本研究では、換気量の増加が室内温熱環境に及ぼす影響を数値シミュレーションを用いて評価するとともに、放射冷房や加湿器の利用など、温熱環境の改善に資すると思われる設備の導入効果についても合わせて検証した。 まず、換気量増加の影響について、熱交換型換気設備を利用している場合でも、換気量を増加させることにより室内温熱環境が悪化(夏季は室温が上がる方向に、冬季は室温が下がる方向に変化)することがわかった。しかし、その影響は夏季と冬季で異なり、特に冬季で室内環境悪化の程度が大きかった。この理由は、冬季の換気により室内に導入された低温の外気は、浮力によって居住域まで沈降するためである。外気の沈降により室内の温度成層が強化され、暖房の温かい風は居住域まで届きにくくなる。そのため、冬季に換気量を増加させる場合、空調の風量を増加させる、サーキュレーターを併用するなど、室内の空気をかき混ぜる工夫をすることが温熱環境の改善に有効であることが示唆された。 また、放射空調の影響について、放射熱輸送モデルを作成し、同モデルの妥当性を実験との比較により検証した。加えて、同モデルを用いて、放射熱輸送、およびそれによって形成される壁面温度分布が、室内の熱的快適性に大きな影響を持つことを確認した。 また、換気による冬季の乾燥に対する対策として加湿能力に優れる超音波方式の加湿器の導入を検討した。空気中での液滴の沈降や蒸発、再凝結を表現するモデルをCFDに導入し、風洞実験との比較によりモデルの再現性を評価した。その結果、発生した液滴が蒸発しながら拡散する様子を表現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度の研究活動はおおむね計画に沿って順調に推移した。 しかし、令和3年度にCOVID-19の流行によるものと思われる実験機材や消耗品の品薄、納期遅れ、実験施設の変則的運用、実験補助者の確保の難航により遅れた分を取り戻すには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度までに、外的要因の影響を比較的受けやすい実験などはおおむね完了しており、今後はCFDモデルを用いた検証などの作業が中心となるため、大きなトラブルが発生する可能性は低いと考えられる。そのため、全体としては当初の計画に沿って進める。 ただし、令和5年度は研究最終年度であるため、論文投稿などの成果発表を含め、期間内に一定の成果を報告できるように研究計画を調節する。
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Causes of Carryover |
旅費について、参加予定の学会(空気調和・衛生工学会大会)が近郊での開催となったため、交通費が小さく済んだほか、宿泊費が不要となり大幅の減額となった。また、研究成果発表のタイミングが後ろにずれ込んだため、論文投稿料が発生しなかった。 次年度使用額については、次年度請求分とあわせ、研究をより加速するための物品費や研究補助者の謝金に用いるとともに、今年度の成果発表費用に用いる。
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Research Products
(7 results)