2022 Fiscal Year Research-status Report
都市内モビリティ向上のための次世代交通サービスの整備・運用方策に関する数理的研究
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21K14314
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 大輔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (00893794)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 都市内公共交通 / アクセシビリティ / 運行ダイヤ / 時空間ネットワーク / 巡回型輸送サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のCASE,MaaSの世界的風潮に追従した交通サービスの多様化,電動・自動運転化は様々な交通課題を解決すると言われている.本研究では,交通課題解決のための社会実装に向けた4つの課題点[課題1:利便性・整備量のバランスからみた現状の都市内公共交通ネットワークの性能評価; 課題2:新しい交通サービスが優位となる都市の空間的な特徴の把握; 課題3:既存の公共交通と新しい交通サービスの組合せ方法; 課題4:既存・新規公共交通サービスの電動化・自動運転化の優先箇所の決定] に着目し,多様な交通サービスの輸送効率性を把握した上で,CASE,MaaS時代における都市内公共交通システムの設計指針を得るための定量的な評価手法の開発を目的とする.本年度では課題1,2,3,4に対応した,以下の具体的成果があった. 課題1:都市内公共交通ネットワークの性能評価:公共交通の車両・乗換移動を多次元のグラフ構造として表現した時空間ネットワークを用いた分析環境を構築し,昨今のCOVID-19感染防止施策による減便の状況と,減便前後における人々の移動利便性の悪化の現状を示した. 課題2:新しい交通サービスの優位性の把握:デマンド型交通やシェアサイクル,配車サービスといった非定路線の交通手段において,デポと配送領域間のLinehaul距離に着目した,高精度な連続近似モデルを構築した. 課題3:都市内交通の最適な資源配分を考えるために,ポイント型の人流データから,短距離の都市内移動需要を取得するための分析手法を構築した.当手法を応用し,鉄道駅周辺の歩行者流動の特徴と都市環境指標の関係について分析を進めた. 課題4:自動運転化・電動化の効率が高いことが想定される,バス交通の通行が多い道路の把握を行うために,時空間ネットワーク内のバス路線の経路を取得する方法を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究題目で設定している4つの課題についての進捗は以下の通りである. 課題1:概ね予定通りの進捗となっている.利便性・整備量のバランスからみた現状の都市内公共交通ネットワークの性能評価:昨今のCOVID-19感染防止施策による減便の状況と,減便前後における人々の移動利便性の悪化の現状を示し,地方都市における悪化の影響が非常に大きい現状を把握した. 課題2:進捗はあるものの,やや遅れている.次世代交通サービスにような,路線・ダイヤが固定されていない交通手段において,デポと配送領域間のLinehaul距離に着目した,高精度で複数車両の巡回距離を推定できる連続近似モデルを構築した.今後,当モデルを応用し,次世代交通サービスの需要分布に対する,必要台数・コスト導出のための分析手法を確立し,それらが優位となる,利便性向上効果の高い都市の空間的な特徴を明らかにする必要がある. 課題3:進捗はあるものの,やや遅れている.都市内交通の最適な資源配分を考えるために,ポイント型の人流データから,短距離の都市内移動需要を取得するための分析手法を構築した. 本年度は手法を応用した,都市環境要素と歩行移動の特徴の関係性の分析を進めた. 課題4:概ね予定通りの進捗となっている.自動運転化・電動化の効率が高いことが想定される,バス交通の通行が多い道路の把握を行うために,時空間ネットワークで移動しているバス交通の実際の経路を取得する方法を構築した. 上述の課題1,2,3に対する成果に基づき,2件の学術論文,2件の査読つき国際会議発表,1件の学術雑誌投稿を行なった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下の通り研究を進める予定である. 課題1:本課題の成果は2件の学術論文,1件の学術雑誌に投稿を行い,一定の研究成果の報告を実施済みである. 課題2:当課題は2件の査読付き国際学会へとを投稿済みであり,今後は提案した手法を盛り込み,デマンド型交通やシェアサイクル,配車サービスといった具体的な交通サービスが,都市内移動の需要密度・移動距離の観点から,その優位性について議論する. 課題3:課題2での新しい交通サービスの優位性を把握した上で,人流データより求めた,移動の速度・時間から不便と判定される移動需要に対する,新しい交通サービス導入に伴う利便性向上効果について明らかにする. 課題4:既存のバス交通が通行する道路とその延長を把握する手法を用い,ランニングコストの低い電動車両の走行に必要となるインフラである充電スタンド,もしくは充電時間の早い架線給電の整備の効果を,バス車両の集中の多寡に応じて決定する手法を検討する.併せて,短距離・高頻度の路線への自動運転インフラ整備案の検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
本研究では人流データを用いた研究を想定した予算請求を行なっていたが,共同研究者の方での予算で一括して購入し,それを活用することとなったため,予算計画からずれが生じている.発生した余剰分に関しては来年度,研究成果を公開するためのシステム開発に充てる予定である.
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Research Products
(5 results)