2021 Fiscal Year Research-status Report
A study of the characteristics of the architectural practices of Renaissance Sculptor-Architect
Project/Area Number |
21K14339
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Research Institution | Kyoto University of Arts and Crafts |
Principal Investigator |
岡北 一孝 京都美術工芸大学, 工芸学部, 講師 (00781080)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ルネサンス / 建築 / 彫刻 / 模型 / 建築家の職能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルネサンス期イタリアは、建築家の職能の形成過程にあったため、名を馳せた画家や彫刻家が建築創作をも手がけることが多くあった。建築の構想や表現において、内観・外観の透視図や建築図面が重要視されたこともあり、建築における絵画的建築空間の特質についてはさまざまに議論されてきた。しかし彫刻については、建築と同じく三次元的表現を特徴とする空間芸術であるにも関わらず、建築創作との関係性は切り離されて考察されることがしばしばである。そこで本研究は、ルネサンス期の彫刻家-建築家が制作したミニチュア建築(墓廟、説教壇、天蓋など)に着目し、それらを単なる彫刻作品ではなく、建築空間表現につながる造形ととらえ、その形態的特徴や、構想から実現までの創作過程などを、彼らが手がけた建築と比較することで、彫刻家-建築家に特有の彫刻的建築ともいえる性質を剔抉することを試みる。そこで、まずは建築模型及び「マイクロ・アーキテクチャー」に着目し、いくつかの研究成果を公表した。マイクロ・アーキテクチャーを構成するものは、噴水、祭壇、墓廟、幕屋、天蓋、説教壇、洗礼盤、石棺、聖遺物箱などのなかで、建築の形態を模したもので、ミニチュア建築と呼んでも差し支えのない彫刻作品である。建築とは比較にならないくらい限られた予算、期間で制作可能なマイクロ・アーキテクチャーは、注文主が自らの邸宅や菩提寺に新しい装飾や建築言語を導入する際に、仕事を任せる芸術家の腕前や仕上がりを判断するための一つの資金石となった。つまり、この芸術は美術・建築でも重要なメディアであった。中世に成熟したこの特徴的な造形物は、ルネサンス期に入ると、古代の形態・形式の伝播の一端を担い、また彫刻家・石工が建築家として数多くの建築を残すことになる一因にもなったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大のため、またその感染症予防のために、予定していた海外での実地調査が行えていない。具体的な作品分析のためには。建築模型とマイクロ・アーキテクチャーの現地での観察とその記録、分析が欠かせない。2022年度以降は、海外調査ができる段階になれば、速やかに実行できるように、準備は進めている。2021年度はマイクロ・アーキテクチャーの概念整理や、これまでに収集してきた資料や、文献を使って基礎的な調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
オンライン空間でも研究者同士の打ち合わせや。ディスカッションを無理なく効率的に行えるようになったことをさらに活用し、日本全国のみならず、ヨーロッパ、アメリカなどの研究者とも、マイクロ・アーキテクチャーや建築と彫刻の関係などについて、意見交換や情報共有をすすめ、研究の効率化と成果の質の向上を目指す。また2022年度も海外調査ができない状況となった場合は、研究計画を再度検討し、文献調査やデジタルアーカイブなど、必ずしも実地調査を必要としない研究手法への変更も念頭に置く。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、またその感染症予防のために、予定していた海外での実地調査が行えていないことが大きく影響している。また国内の移動も難しく、研究打ち合わせや研究会等も全てオンライン実施となったことも理由の一つである。 具体的な作品分析のために必要な文献資料も図書館、文書館調査が行えていないこともあり、見定まっていない。一方で、海外調査ができる段階になれば、速やかに実行できるように、準備は進めている。2021年度はマイクロ・アーキテクチャーの概念整理や、これまでに収集してきた資料や、文献を使って基礎的な調査を行うことができた。 なお、繰越金額については、海外での調査日程を2022年度、2023年度に長めにとることにより消化する予定である。
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