2022 Fiscal Year Research-status Report
MEMSミラーを用いた超小型宇宙望遠鏡用1秒角指向制御装置の研究
Project/Area Number |
21K14342
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 伸哉 東北大学, 工学研究科, 特任講師 (90847279)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙望遠鏡 / 超小型衛星 / MEMSミラー / 系外惑星 / 姿勢制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、10kg級の超小型衛星でも指向精度1秒角が達成可能な宇宙望遠鏡を、MEMSミラーを使用して実現することにある。 1年目の昨年度は、主にMEMSミラーのフィードバック制御を行うための光学系の設計と実験を主に実施した。研究提案時の概念的な光学系の設計状態から各部の検討を詳細化し、概念実証機に相応しく市場での調達が容易な光学素子を使用して光学実験台上に実験光学系を構築した。光学性能については改良の余地が残るものの、光路設計のコンセプトを満足する装置が構築した。一方で、世界的な半導体不足の影響からMEMSミラーを制御するための電子回路を構成するための部品が入手できなくなり、計画に遅れが生じた。 続く本年度(2年目)では、入手できなくなった正規品の制御回路の代替となる回路の開発から着手し、複数回の試作を経てPCから制御することのできるMEMSミラー駆動回路が完成した。1年目に構築した光学実験台上の試験装置へと統合し、レーザー光源を利用したオープンループ状態での駆動実験を行い、実験には十分な約1秒角精度のMEMSミラー駆動能力があることを確認した。 MEMSミラーの制御回路の開発と平行して、望遠鏡にて撮影した星像位置をリアルタイムに求めるための画像処理ソフトウェアを開発した。星像の明るさピークを検出する「大津法」を使用することでし、バックグラウンドの変化にロバストなアルゴリズムとした。実験室内に構築した暗室とスターシミュレータを利用し、サブピクセル単位かつ20Hzで星像位置を検出可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究申請時の計画と比べて、1年目の遅延の影響を受ける形で遅れが生じている。これはコロナ禍や国際情勢の不安定化に起因する世界的な半導体不足に大きく影響されたためである。通常であれば1週間程度で納品されるはずの部品が、半導体不足の影響により1年以上の納期に変更される例も度々あり、必要な部品がタイムリーに入手できずに試作評価に遅れが生じていた。 2年目以降は、代替品への切り替えや半導体不足状況の改善に伴い計画通りのペースで順調に進んでいるが、1年目の遅れを取り戻すまでには至っておらず「やや遅れている」とした。 実験の結果予期せぬ事態が発生する等の本来の研究に関わる問題はこれまで発生していない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の2年目の想定では、1年目において研究室内の光学実験台上に構築した試験装置を衛星搭載を想定したプロトタイプへと改良する計画であった。しかしながら、1年目に発生した半導体不足等に起因する物品調達の問題から昨年度末の時点で方針を転換し、光学実験台上に構築した大型の装置での実験を継続することとした。衛星に搭載可能なサイズに収めることに固執せず、実験室内に疑似的に星像を再現する装置(スターシミュレータ)を構築する方針へと転換したことで、より定量的な評価が行いやすい環境を構築でき、円滑な実験につながっている。3年目でもこの方針を継承し、実験室内に構築した光学システムとスターシミュレータを利用した実験を通じて研究を推進する。
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Causes of Carryover |
購入を計画していた一部の光学部品について、設計を変更した方が好ましいと思われるものがあり、次年度への使用へと変更した。
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