2021 Fiscal Year Research-status Report
その場計測に基づく複合材構造製造過程における複合材-治具間干渉機構解明とモデル化
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21K14353
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
久田 深作 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10898810)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 複合材料 / 成形 / Tool-part interaction |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は複合材成形過程における複合材-治具間干渉に影響を与える因子について包括的な理解を得るために,プリプレグの厚さ,層間樹脂層の有無,成形プロセスをパラメータとした成形試験を行った.試験片は航空宇宙構造部材の成形においてもっともポピュラーな手法であるオートクレーブ成形を行い,成形後の試験片に対しては残留変形計測および顕微鏡による微視構造観察を実施した.また,複合材-治具間干渉に各パラメータが与える影響について成形中の複合材の樹脂挙動と関連させて考察するため,DMA装置による動的粘弾性測定試験及びレオメータによる粘度測定試験を行った.さらに,現象理解の一助とするための簡易的な有限要素解析を実施した. 今年度の研究によって得られた成果として,材料全体の厚さが同じであれば,プリプレグ厚さが薄いほど干渉による残留変形がやや大きいことが分かった.この結果はこれまでに提案されているメカニズムと整合するが,影響の程度は大きくない.一方で,層間樹脂層を有する材料を用いた場合,層間樹脂層がない材料と比較して著しく大きな残留変形を示した.近年の航空機では層間樹脂層を有する材料が主流である中,この点を強調した先行研究はなく,重要な成果の一つである.また,成形プロセスについては保持温度,保持時間によって残留変形の程度が大きく異なっており,残留変形がほとんど見られない成形プロセスも存在した.この点に関する先行研究は研究代表者の知る限り皆無であり,重要な成果である. 層間樹脂層及び成形プロセスによる残留変形の変化,及び前述の熱分析と有限要素解析の結果から,複合材-治具間干渉においては熱変化時のせん断剛性が重要であり,せん断変形できないほどせん断剛性が高い場合及び応力を持てない程度にせん断剛性が低い場合には影響が生じにくいことが予想される.これは適切な製造プロセスを設計する上で重要な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は予定していた試験及び解析内容を全て完了した.各結果も妥当であり,十分に新しい知見が得られたため,順調に進展したといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果によって,複合材-治具間干渉においては熱変化時のせん断剛性が重要であることが示唆された.従って,来年度は複合材-治具間の成形中のせん断力の伝達について明らかにすることを主眼に置いた研究を行う.具体的には光ファイバによる成形時の複合材-治具間のせん断ひずみ分布計測を行う.ただし,界面のせん断ひずみを直接計測することは困難であるため,0.3mm程度の極薄のアルミ治具表面のひずみ分布計測を行う.アルミ治具は極薄であるため,複合材-治具界面のひずみを示していると考えられ,これを計測することにより成形中のせん断力の伝達について知見を得る.当初はOFDR-FBGによる高精度・高分解能のひずみ分布計測を行う予定であったが,近年の新型コロナウイルスの影響によってセンサの調達が困難になったため,波長分割によるFBG多点計測(WDM)方式による計測を行う.また,理論解析・有限要素解析を併用し,現象への理解に結び付ける.
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