2023 Fiscal Year Research-status Report
波浪中における船舶転覆の前兆現象である対称性喪失分岐の解明とその理論推定
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21K14362
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 政宏 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (30845334)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対称性喪失分岐 / 船舶転覆現象 / 周期倍分岐 / カオス / パラメトリック横揺れ / 平均化法 |
Outline of Annual Research Achievements |
船舶の転覆現象の前兆である対称性喪失分岐について明らかにするために,簡易なモデルに基づき横揺れの応答を詳細に検討した.さらに,数学モデルの改良を目的とし,新たに曳航式パラメトリック横揺れ計測試験および拘束模型試験を実施した.縦波中でのパラメトリック横揺れというと通常2波に1回揺れる2:1のパラメトリック横揺れを指すが,低周波数側では,2波にk回(kは自然数)揺れるパラメトリック横揺れが発生しうることが古くから知られている.昨年度,2:kのパラメトリック横揺れおよび復原力変動項の影響が明らかとなったため,新たに模型実験を複数回にわたり実施し,計算との比較を行った.その結果,復原力変動の推定については,従来は波浪中で静的平衡状態にあると仮定されていた縦運動の動的影響を考慮することで劇的な改善が確認された.また,2:2のパラメトリック横揺れについては,従来想定していた以上に複雑な分岐が数値計算に基づく検討から明らかになった.対称性喪失分岐の発生に関連して,風や荷崩れによってあらかじめ左右非対称性がある場合についての検討も行った.その結果,ある程度大きなの左右非対称性を有する場合には対称性喪失分岐を経ずに転覆現象に至る場合があることを発見した.現在は,斜波の影響を考慮した復原力変動項の近似モデルの検討中である.さらに,風や荷崩れではさほど大きな左右非対称性を生じないため,対称性喪失を経ない転覆現象のみならず,微小な左右非対称性の対称性喪失分岐および転覆現象への影響についても研究を実施する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画していた模型実験および計算を実施し,縦運動の動的影響を考慮することで復原力変動の推定が劇的に改善すること等の成果が得られたため,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
横波中での同調横揺れおよび縦波中でのパラメトリック横揺れについて,引き続き近似解法の開発に取り組む. 模型実験による波浪中運動計測を行い,開発手法の妥当性の検証を行う.
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Causes of Carryover |
2023年度は,コロナによる実験の制限のため,実験に使用する予定であったラップトップの購入を見送ったことから,物品費の使用残額が発生した.2023年度に発生した使用残額は,2024年度に実施予定の自由航走模型実験に使用する消耗品を購入し,物品費として使用する計画である.
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