2022 Fiscal Year Research-status Report
多状態システムの数理的性質を利用した信頼性設計問題に対するアルゴリズムの開発
Project/Area Number |
21K14370
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中村 太信 東海大学, 情報理工学部, 助教 (50880720)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 多状態システム / 信頼性モデル / 組合せ最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,多様な状態を表現できる「多状態システム」に対する最適配置問題に取り組んでいる.多状態システムとは,システムやその構成要素であるコンポーネントの状態を多段階で表現可能なシステムモデルであり,例えば,劣化に注目した場合には新品状態,劣化により故障しやすい状態,故障状態となる.また,能力に注目した場合には,完全稼働,部分稼働,停止状態となる.多状態システムは加熱乾燥システムや輸送システム,センサシステムなど多くの現実システムに適用が可能であり,その汎用性と柔軟性が高いことが特徴である.最適配置問題とは,システムが要求された機能を遂行する確率である信頼度を目的関数として,それを最大化するコンポーネント配置を探索する問題である.多状態システムの最適配置を得ることで,多状態システムとして表現可能な現実システムの信頼度向上を目指している. 2022年度は,最適配置が満足すべき必要条件を導出することを目標とした.この必要条件を満たさない配置は目的関数値がより大きい配置が存在するため,最適配置になりえないことを意味する.必要条件を帰納的に導出するために,2021年度に構築した分枝限定法に基づく最適配置探索アルゴリズムを利用して,最適配置が満足すべき必要条件を実験的に導出した.そして,導出した条件を既存のアルゴリズムに組み込んだアルゴリズムを構築した.数値実験により,導出した条件の有効性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では,多状態システム(SWS)の数理的性質を解明し,そこから得られる知見を用いて効率的な解法を構築することを目的としている.大規模な組合せ最適化問題を解く際には,個々の問題が持つ数理的性質を最大限利用することで,計算効率の向上が期待できる.2022年度は,必要条件の候補は得たものの,解析的に証明するには至らなかったため,進捗がやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,多状態システム(SWS)の数理的性質を用いて効率的な近似解法を構築することを目指す.その際,遺伝的アルゴリズムやアニーリング法などの汎用的なメタ戦略を単に適用するのではなく,これまでに導出した必要条件や数理的性質から導かれる経験則を組み込むことで,解探索空間を狭め,探索効率の向上を試みる. 今後の具体的な研究推進方策としては,以下の手順を計画している.(1) 2022年度に導出した必要条件の解析的証明を行い,その妥当性を確認する.(2) 必要条件を基にした新たな近似解法のアルゴリズムを設計し,実装する.(3) 提案した近似解法の性能評価を行い,従来のアルゴリズムと比較する.(4) 近似解法の改善や最適化を行い,さらなる性能向上を目指す.このような取り組みを通じて,多状態システムに対する最適配置問題の効率的な解法構築を進めていく.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,2022年8月に開催された国際会議に対面形式で参加する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン参加となったためである.それに伴い,予定していた旅費や宿泊費が節約され,次年度の使用額に反映された. 2023年度は,研究成果を広く発信するために,国内外の学会やシンポジウムに参加する計画を立てている.
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