2021 Fiscal Year Research-status Report
太陽電池パネル本質的安全設計のための電子相転移に基づく外場感応電流制御技術の創出
Project/Area Number |
21K14378
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 大輔 長岡技術科学大学, 技術経営研究科, 助教 (30883897)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 太陽電池パネル / ホットスポット / 逆バイアス電圧 / 過渡熱特性 / 熱応力 / 発火 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,太陽電池パネル(PVパネル)内で影などにより発電しなくなった太陽電池セル(以下不良セル)に,ホットスポットが発生してから発火に至る過程の現象分析とリスク評価を行った.まずは,結晶シリコン系太陽電池セルに逆バイアス電圧が印加された際の電流-電圧特性を測定し,降伏電圧を明らかにした.次いで,実際のPVパネルの仕様(太陽電池セルの枚数,電気接続方法)を想定し,直列接続された420枚の太陽電池セル群のうち1枚だけが不良セルになった場合と,クラスタ(30枚の直列接続群)が不良になった場合について,ホットスポット発生後の過渡熱特性を観察した.ガラスカバー/封止材/太陽電池セル(1枚)/封止材/バックシートの層構造からなるパネルを試作し,快晴時の出力電流と,降伏電圧もしくは逆バイアス電圧による電力消費を再現した.結果として,1枚だけが不良セルになった場合は,不良セル内で局所的に温度が急上昇し数分で300℃を超えた.この時,太陽電池セルは熱破壊しており,その後最高温度点が電流経路であるバスバー電極・インターコネクタに沿って移動することが確認された.最終的に,熱応力によりガラスカバーが割れ,バックシートが焼け焦げたことから,この条件ではPVパネルの故障と発火に至る危険性があることがわかった.一方,クラスタ不良を想定した場合は,パネル温度は雰囲気温度とほぼ同じであり,外観にも変化がないことから故障・発火のリスクは十分低いと考えられる.熱破壊・発火のリスクを同定するために,より多くの日射条件-不良セルの枚数の組み合わせに対するデータを得る必要があり,引き続き過渡熱特性を調査する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった,各種条件下における不良セルでの消費電力(発熱量)の推定方法確立と,試作パネルを用いたホットスポット発生時の過渡熱特性の解明を順調に進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
より多くの日射条件-不良セルの枚数の組み合わせに対してPVパネルの過渡熱特性のデータを実験により取得する.また,力学的な刺激により発光(応力発光)する材料を溶剤に分散させPVセルに塗布する方法等により,PVパネル内の熱応力の時間変化を明らかにする.本研究では,電子相転移材料(ある温度を境に金属-絶縁体間で相転移する材料)によるバイパスの回路の形成を目指しており,以上の結果を基に,熱破壊・発火のリスクを最小化できるバイパス回路の設計仕様を決定する.
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Causes of Carryover |
今年度の予算の大部分は輝度分析システム(カメラおよびソフトウェア,見積価格:1,200千円)の購入費用として計上していた.この機器は,力学的な刺激により発光する材料(応力発光体)を用いた太陽電池パネルの応力観察に用いる予定だったが,本内容は次年度以降に検討することとし,今年度は太陽電池パネルの熱特性の解明に焦点を当てることとした.応力発光体によって応力分布を観察できる可能性については現在検討中であり,それが確認でき次第輝度分析システムを購入する.また,次年度は,試作太陽電池パネルを用いた各種試験(今年度からの継続)と電子相転移材料を用いたバイパス回路の実現可能性検討を予定しており,予算は主にパネルとバイパス回路の構成材料の購入に使用する予定である.
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