2022 Fiscal Year Research-status Report
海溝型巨大地震予測のための震源の短周期生成プロセスの解明とその検証に関する研究
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21K14388
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 恵理 京都大学, 防災研究所, 特定助教 (70826726)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 1944年東南海地震 / 1923年関東地震 / サイト増幅特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は対象とする1923年関東地震、1944年東南海地震、1946年南海地震のうち、令和3年に引き続き主に1944年東南海地震に着目し研究を遂行した。また新たに1923年関東地震について、建物被害に関する資料を収集し、大被害地域において強震動計算地点を選定し、それらの地点での微動観測計画を作成した。 1944年東南海地震に関しては、令和3年度に採用した、Ito et al.(2021)に基づく深部・浅部統合地盤構造モデルによる修正理論サイト増幅特性では、大被害地域での計算倒壊率が観測倒壊率よりも過小評価になったことを鑑み、新たなサイト増幅特性計算手法を適用した。具体的には以下の手順に従った。まず、国土地理院発行の地形図から推定した当時の集落中心地点において令和3年度に観測した微動観測から、微動の水平上下スペクトル比MHVRを計算した。そうして得たMHVRとKawase et al. (2018) のEMR法により大被害地域の地点で擬似地震動水平上下スペクトル比pEHVRを求め、それにIto et al.(2020)のVACF法を適用することで各地点における擬似サイト増幅特性pHSAFを求めた。このサイト増幅特性を用いて建物被害評価モデルを用いて建物倒壊率を計算したところ、大被害地域においては依然過小評価傾向となった。 いずれのサイト増幅特性評価手法から得られる計算倒壊率が過小評価となったことから、その原因として非線形性評価手法に関して再検討する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は1944年東南海地震の建物被害のより高精度な再現のため、再評価したサイト増幅特性を用いて建物被害の再現を行った。 研究自体は今後順調に進む見通しはついているものの、当初の計画よりやや遅れていると判断した。その理由については、上記の1944年東南海地震の研究と並行して、1923年関東地震に関して、関東平野南部全域での大被害域内の全市町村での微動観測を予定していたが、急遽決まった海外との共同研究プロジェクトを実施するために、代表者が令和4年度後半に5カ月海外滞在をすることとなり、計画通りに観測が実施できなくなったためである。 令和5年度には長期の海外滞在の予定もなく、微動観測については令和5年度初頭に遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
既に観測事実と概ね調和的な結果が得られている1944年東南海地震については、大被害地点での過小評価の改善のため、非線形評価手法の再検討を行う。 1923年関東地震、1946年南海地震については当時に対応する建物被害評価モデルを構築した上で1944年東南海地震と同様の手法で震源の破壊プロセスを推定する。 次年度後半にはこれらの結果をとりまとめ、論文を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当該年度内に研究代表者が、急遽海外との共同研究で5か月間現地に滞在することとなり、予定していた1923年関東地震において被害を受けた関東平野南部全域におけるサイト増幅特性推定のための微動観測が年度内に遂行できなかったためである。 この金額は、翌年度初頭に、南関東への微動観測のための旅費として使用する予定である。それと並行として、翌年度分として請求した助成金については、翌年度が本助成の最終年度にあたり、研究を取りまとめ発表する必要があることから、当初の予定通り、学会への参加費や論文校正費・投稿料に使用する予定である。
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