2022 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理粒界熱力学によるセラミックス粒界の原子構造・特性の精密設計
Project/Area Number |
21K14405
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横井 達矢 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (70791581)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 結晶粒界 / 第一原理計算 / 機械学習 / 原子間ポテンシャル / 自由エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セラミックス粒界の熱力学的安定性を原子レベルで解明するため、第一原理計算と機械学習を統合し、高精度・高速で粒界構造および自由エネルギー計算が可能な計算手法の確立を試みた。まず、大規模な計算セルを要する粒界に対し、系の全エネルギーや原子にかかる力を高精度・高速で予測する手法として、第一原理計算データを学習させた人工ニューラルネットワーク(ANN)原子ポテンシャルを構築した。さらに多元系に適用するため、入力層で2・3体間の元素種の重複組み合わせを評価し、各組み合わせで記述子のハイパーパラメータに違いを付けて元素種を判別する構成を実装した。そしてこの手法をAl2O3に適用し、学習データに含まれていない粒界の安定構造と粒界エネルギーを予測した。その結果、予測結果は第一原理計算と非常に近い結果であり、また走査型透過電子顕微鏡の観察結果とも一致した。よって多様な粒界に適用できる汎用的なANNポテンシャルが構築できたといえる。 次に、粒界自由エネルギーを定量評価するため、ANNポテンシャルを格子動力学法と分子動力学計算に組み込んだ。まず、この手法の予測能力の検証として、単純な系であるFCC構造をもつAlを対象に、ANNポテンシャルの格子振動モードや高温下でのエネルギーや原子にかかる力の予測能力を検証した。その結果、完全結晶だけでなく粒界原子の格子振動モードも、第一原理計算と同等の精度であった。また融点付近での粒界エネルギーや原子にかかる力も十分小さな誤差で予測できていた。最終的にANNポテンシャルを熱力学的積分法に組み込み、非調和格子振動を考慮した粒界自由エネルギーを評価した。その結果、特定の粒界では、完全結晶より配位数が高く平均結合長が長い特異な粒界原子が存在しており、その原子の調和近似から逸脱した格子振動により粒界自由エネルギーは有意に変化することが明らかとなった。
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Research Products
(9 results)