2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノシートの形態変化による歪み効果を利用した新規発光材料の創製
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21K14407
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤村 卓也 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (80757063)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 層状化合物 / スクロール / 歪み / 層状複水酸化物 / 希土類 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は希土類含有層状複水酸化物(LDH)スクロールの合成とイオン交換によるスクロールの壁面間距離の制御、そして得られたスクロールの発光特性評価を行い、研究構想の核心的部分である『スクロールの歪みの変化により発光特性が変化しうるのか』について重点的に検討を行なった。 既報を参考に様々な組成のEu3+含有層状複水酸化物(LDH)スクロールの合成を試み、結果としてZnおよびAlを母体とするEu3+含有LDHスクロールを得ることに成功した。得られたスクロールの壁面間距離を変化させて歪みを制御するため、層間陰イオンの交換を試みた。層間陰イオンの全てを交換するには至らなかったが、層間陰イオンをトリメシン酸イオンから硫酸イオン、および塩化物イオンに交換することに成功し、またスクロールの壁面間距離は陰イオン交換後に0.84 nm(トリメシン酸イオン)から0.39 nm(硫酸イオン)、0.30 nm (塩化物イオン)に変化した。顕微鏡観察よりイオン交換後もスクロール形状を維持していたことから、歪みの異なるLDHスクロールを得ることに成功したと考えている。これらスクロール壁面間距離が異なるLDHスクロールの発光スペクトルにおいて、周辺環境に鋭敏に応答する5D0→7F2遷移の発光帯がイオン交換後に分裂しており、またその挙動は層間陰イオン種により異なっていた。この現象が観測されたメカニズムに関して実験的確証は得られていないものの、これらの結果は『スクロールの歪みの変化により発光特性が変化する』こと、ひいては本研究で考案している歪みを利用した発光特性制御が可能であることを示唆するものであると考えている。今後は歪みの効果と発光挙動の相関関係においてより詳細な検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった『ナノスクロールの合成および層間イオンの交換によるスクロールの壁面間距離の調整』に成功するとともに、研究構想の中心的部分である『スクロールの歪みの制御により発光特性が変化する』可能性を見出した。現在は成果を学会および論文発表するため準備を進めている。また励起寿命測定装置等を作製し、来年度により詳細な発光特性評価を可能とした。これらの状況を踏まえると,本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)LDHスクロールにおける発光変化特性の機構解明 次年度は壁面間距離が異なるLDHスクロールのラインナップを増やすとともに、ラマンスペクトルやXAFS等によるスクロール内に生じている歪みの大きさについて調査、新たに作製した装置を用いた発光特性の多面的な評価を加え、歪みと発光特性との相関関係を明らかとすることを目指す。また現在は計算化学的手法から歪みの効果を検証すべく、研究協力者と議論を進めている。 (2)新たなスクロールの合成 本研究の着想(スクロール中に生じた歪みによる発光特性制御)はLDHのみならず、他の層状化合物スクロールでも機能すると考えられる。来年度は新たなスクロールの合成および発光特性評価にも着手し、歪みの効果を検証する予定である。
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Research Products
(14 results)