2022 Fiscal Year Annual Research Report
エピタキシャル歪を用いた金属イオン分布の制御と磁気特性に関する研究
Project/Area Number |
21K14413
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
浜嵜 容丞 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 講師 (40826624)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薄膜 / マルチフェロイック / エピタキシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
「Society 5.0」の実現には消費電力低減は急務の課題であり、磁気秩序と強誘電性を併せ持つマルチフェロイック物質を用いたメモリは低消費電力が期待される。しかしながら、現在存在が確認されているマルチフェロイック物質全般に共通する問題として、磁気秩序発現温度が室温より極めて低いことが挙げられる。本研究では、室温マルチフェロイック物質の有力候補のε-Fe2O3に着目した。ε-Fe2O3は近年、粒形サイズを制御することで単相合成が可能になった、準安定相で出現する単純鉄酸化物である。また、ε-Fe2O3は、室温で酸化物最大の保磁力と高い磁気相転移温度 (495 K) を持つフェリ磁性体でもあり、AlやGaなどの非磁性元素で置換することで磁気特性を変化させることができる。磁気テープやミリ波吸収材料への応用が期待されているが、室温マルチフェロイック物質として研究対象にされた例は少ない。しかしながら、鉄酸化物であるε-Fe2O3は価数の揺らぎによるリーク電流が多く、本来の強誘電性の測定が困難である。このリーク電流は価数変化のない三価の非磁性元素で鉄を置換することで抑制可能であるが、非磁性元素での置換は逆に磁気相転移温度を大きく低下させてしまう問題がある。申請者は、ε-Fe2O3では磁性元素の占有サイトの違いにより磁気相互作用が大きく変化することに着目し、単結晶基板からのエピタキシャル歪によって薄膜の磁性元素のサイト占有率を変化させ、磁気特性を制御かつ向上させることを目的とした。本研究によって、マルチフロイック物質に対して新しい展開がもたらされるものと期待される。
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Research Products
(3 results)