2021 Fiscal Year Research-status Report
機械学習による有機無機複合ナノシート膜の表面濡れ性制御と高効率液体輸送技術の開発
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21K14420
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
都倉 勇貴 信州大学, 繊維学部, 研究員 (60881688)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 濡れ性 / 撥水 / 機械学習 / ナノシート / 層状物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
撥水・撥液コーティングは様々な分野で注目されているが、その設計には予測や制御が困難な表面エネルギー、および表面のナノ-マイクロ構造の制御が必要であるため、研究者の経験や膨大な実験を必要とされている。本事業では層状酸化物由来のナノシート薄膜を設計し、機械学習を活用することで、高性能な撥水・撥液ナノシート薄膜の設計・制御を目的としている。 本年度はナノシート薄膜設計の前段階として、計算から求めにくいパラメータである液体の表面張力や、基板表面と様々な液体の濡れ性指標の一つである接触角に関して、比較的入手しやすい物性値や計算値を用いて予測可能なモデルの構築の検討を行った。これまで液体の表面張力を計算する手法が報告されてきているが、計算プロセスが複雑といった問題があった。また、液体-基板間の接触角を測定する方法も確立されているが、装置や実験が必要となる。本年度は、液体に関する比較的入手しやすい物性値や計算値について、スパースモデリングと研究者の経験から、表面張力に深く関連する因子の抽出を行い、モデルの構築について検討を行った。その結果、液体に関する5つの物性値のみで液体の表面張力を予測可能なモデルの構築に成功した。また、様々な液体とシランカップリング剤を修飾した基板およびプラスチック表面の間の接触角についても同様の方法で、深く関連する因子の抽出とモデル構築の検討を行い、液体や基材に関する4つの物性値のみで予測可能なモデルの構築に成功した。これらの成果により、未知物質の表面張力や接触角を予測することが可能となり、今後様々な分野への応用展開に期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていたナノシート薄膜の濡れ性制御にあたり、本年度は濡れ性指標の中で重要な物性値である液体の表面張力、およびシランカップリング剤を修飾したガラス基板やプラスチック基板など様々な表面に対する液体の接触角に関して、機械学習を活用することで、予測可能なモデルの構築し、これらに深く関連する本質的な物性を明らかにした。これは表面の濡れ性制御にあたり必要な知見であり、大きな進展である。これらの知見を基に、現在は層状酸化物由来のナノシートに関して、修飾したゲスト分子・酸化物の種類・コーティングプロセス・コーティング条件を検討することで、ナノシート薄膜の設計に取り組んでおり、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の研究計画の通り、層状酸化物由来のナノシートに関して、修飾したゲスト分子・酸化物の種類・コーティングプロセス・コーティング条件の検討・最適化を行うことで、濡れ性指標のうち高い接触角・低い転落角を有するナノシート薄膜の設計に取り組む。このナノシート薄膜の設計にあたり、機械学習と研究者の経験を活用することで、液体を滑落させる薄膜に必要かつ重要な因子を抽出・検討を行い、ナノシート薄膜上における液体の滑落性を制御可能なモデルの構築を行う。以上の方法から、濡れ性指標に影響を与える液体と基板の本質的な因子に対する理解を深め、撥液性を緻密に制御可能な設計指針を確立する。
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Causes of Carryover |
申請時に導入を予定していた装置について、購入せずに分析・評価が可能となり、導入の必要がなくなったことから差額が生じた。次年度では、材料合成用の実験器具・機器や試薬、材料分析機器にかかる費用、成果発表のための旅費・投稿費などに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)