2021 Fiscal Year Research-status Report
金属被覆セルロースナノ繊維の開発とエネルギー伝導フィラーとしての展開
Project/Area Number |
21K14421
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Research Institution | Kyoto Municipal Institute of Industrial Technology and Culture |
Principal Investigator |
野口 広貴 地方独立行政法人京都市産業技術研究所, 産業支援グループ, 次席研究員 (50796167)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 金ナノ粒子 / 導電性 / 熱伝導性 / フィラー / コンポジット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,樹脂用の熱及び電気伝導性フィラーとして金属被覆したセルロースナノファイバー(CNF)を開発する。近年,スマートデバイスや電気自動車の著しい発展に伴い,それらの部材として,熱及び電気伝導性樹脂の需要が高まっている。一般的に樹脂用フィラーとしてはマイクロスケールの無機微粒子が利用されているが,樹脂に熱・電気伝導性が発現するためには30vol%以上のフィラー添加が必要とされている。多量のフィラー添加は樹脂の重量増加や脆化を招くことから,少量の添加で熱及び電気伝導性(エネルギー伝導性)を発現可能なフィラーの開発が求められている。本研究では,高アスペクト比,高強度,低比重などの特徴を有するセルロースナノファイバー (CNF) に着目し,CNF界面に金属を被覆することでエネルギー伝導フィラーとして活用することを目指す。高アスペクト比であるナノフィラーは樹脂内部で三次元的なネットワーク構造を形成しやいことから,CNFの界面にエネルギー伝導性を有する金属を連続的に配置することで従来の微粒子状フィラーよりも効率よくエネルギー伝導パスを構築可能であることが期待できる。本研究の達成により,フィラー添加量削減による複合樹脂の軽量化,成形性の改善,低コスト化が期待できる。 本年度は,CNFへの金(Au)の被覆に注力した。Auの被覆は,①イオン性官能基の導入によるCNFの界面電荷制御,②CNF界面へのAuイオンの静電吸着,及び③CNF界面におけるAuイオンの還元の3ステップで実施した。調製条件を検討することで,CNFへのAuナノ粒子の緻密な担持を実現すると共に,Au被覆CNFの導電率が10^3~10^4 S/m であることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はAu被覆CNFの開発に注力した。CNFへのAu被覆の前処理として,末端に四級アンモニウム基を有するカチオン性エポキシモノマーを利用したCNFのカチオン化処理を実施した。カチオン性官能基の導入は,赤外分光スペクトルによる四級アンモニウム基由来の吸収帯(1480cm-1)により確認した。また,導入量は元素分析によって算出した。カチオン化処理がAu被覆に有用であることを確認するために,カチオン性官能基の導入量が異なるCNFの水溶液にAuイオン(四塩化金酸, [AuCl4]^-)を加え攪拌したのち,遠心分離を行い,上澄み液の紫外可視吸収スペクトルを測定した。試験と同等濃度の四塩化金酸水溶液の吸収強度と比較し,カチオン化処理を実施していないCNF分散液の上澄み液はほとんど吸収強度に違いが無いのに対し,カチオン化処理を実施したCNFの分散液の場合,カチオン性官能基の導入量が高い程,吸収強度が低下した。これはCNF界面がカチオン化されたことでAuイオンが静電的に吸着され易い環境となったことを示唆している。次いで,遠心分離により回収された沈殿を再度水に分散し,還元剤を添加することで,CNF界面に吸着したAuイオンを還元した。走査型電子顕微鏡にて還元処理後のCNFを観察すると,数十nmのAuナノ粒子がCNF界面に析出していることを確認できた。しかしながら,CNF界面に吸着したAuイオン由来の析出量のみではCNFに導電性を付与するには不十分であった。そこで, CNF界面上のAuナノ粒子の結晶成長を促進するために,表面吸着量よりも過剰な[AuCl4]- が存在する状況で,還元条件を検討することで直径数十nmのAuナノ粒子をCNF上に緻密に析出させることに成功した。Auを担持させたCNFをフィルム上に圧縮し導電性を測定したところ,10^3~10^4 S/m程度の高い導電率を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,金属被覆CNFの①調製,②樹脂への均一分散,③エネルギー伝導性フィラー性能の評価,の3段階で進行する。今年度は,まずAu被覆CNFのスケールアップ合成を実施し,テストスケールと同等なAuナノ粒子の精密な被覆が実現可能か確認する。その後,大量合成したAu被覆CNFを利用して,②Au被覆CNFの樹脂への分散に取り組む。Au被覆CNFと相溶性の高い樹脂を中心に検討を進めるために,極性の異なる数種類の汎用樹脂を用いてAu被覆CNFが良分散しやすい樹脂をスクリーニングする。樹脂との複合化は,まず樹脂とAu被覆CNFを双方共通の良溶媒に分散したのちに溶媒を留去する手法で実施する。得られた複合樹脂について,外観および光学顕微鏡により,巨視的な繊維の分散状態を評価したのち,X線CTや電子顕微鏡観察などで局所的な分散状態,樹脂と繊維間の密着性などを評価する。Au被覆CNFの良分散が得られた樹脂について,様々な添加率でAu被覆CNFを添加し,それぞれのエネルギー伝導性を評価する。エネルギー伝導性は,伝導性が発現する最小の添加率(パーコレーション閾値)と,フィラー添加で得られる最大の伝導率を調査する。また,ナノ繊維形状がエネルギー伝導パスの形成に効果的であるかを検証するために,一般的なカーボン系微粒子や,セルロースナノクリスタルなどの低アスペクト繊維にAuを担持させたフィラーと,パーコレーション閾値を比較する。最終年度は,Au被覆CNFのフィラー性能評価を継続するとともに,応用展開として,CNFへのAu被覆で得られた知見を基に,Au以外の金属,例えばAuよりも安価なAgやCu,磁性を有するNiなどを被覆したCNFの開発に取り組み,金属担持ナノ繊維としての性能や,フィラーとしての機能についても評価する。
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