2021 Fiscal Year Research-status Report
Trans-scale structural control and strengthening of L12-type (Al, Fe)3Ti-based cellular structure
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21K14424
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 飛鳥 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90802603)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セル構造体 / 金属間化合物 / 微視組織 / 結晶構造 / 反応過程 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,反応合成によって作製できるL12型(Al, Fe)3Ti基セル構造体の結晶構造,微視組織,セル構造にわたるマルチスケールの構造形成のダイナミクスの理解,構造制御,機械的性質の向上を行い,軽量,高剛性,高強度な構造材料を創出することを目指している. 本年度は,マルチスケール構造形成のダイナミクス理解に向けて,セル構造形成過程,微視組織形成過程の調査を行った.セル構造形成過程については,L12型(Al, Fe)3Tiと比較材としたD022型Al3Tiのセル構造形成過程の透過X線その場観察を行った.その結果,これら2種の材料では,セル構造を形成する前段階の微小な体積変化の過程に差があることが分かった.具体的には,体積変化の過程がL12型(Al, Fe)3Tiの方が,D022型Al3Tiよりも約4分の1程度に短縮されることが明らかとなった. 一方,微視組織形成過程については,反応合成過程を一方向に伝播させ,急冷によって途中で停止させることで反応進行度に傾斜をつけた試料を作製した.この試料について,微視組織観察を行うことで,微視組織形成過程を理解できる.微視組織形成過程においては,L12型(Al, Fe)3Tiでは中間生成物として,Al13Fe4が形成された.さらにこの中間生成物は反応の進行とともに多量のTiを固溶し,その後の反応を加速させていることが示唆された.この中間生成物はD022型Al3Tiの反応過程には見られない.よって,こうした中間生成物の形成によって,反応が加速され,セル構造形成に至る前段階を短縮したと考えられる. 以上のように,本年度は微視的なスケールで生じた現象と巨視的なスケールで起きる現象の関係について明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としていたL12型(Al, Fe)3Tiのマルチスケール構造形成のダイナミクス理解に向けて,透過X線その場観察や反応進行度に傾斜を与えた試料の観察など,当初予定していた実験を行うことができた.特に,D022型Al3Tiと比較することで,微視的なスケールでの反応過程の差異を理解することができた.また,こうした微視的なスケールでの反応過程の差異が巨視的なスケールでのセル構造形成に与える影響についても明らかにすることができた.よって,おおむね当初の計画通りに成果を出すことができたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で,マルチスケールにわたる構造形成に関して理解することができた.今後は特に微視的なスケールを積極的に制御する体系構築を目指す.具体的には反応後のポスト熱処理について検討する.L12型(Al, Fe)3Tiセル構造体は,L12結晶構造をもつ母相からなる金属間化合物材料である.一方で,母相内にはSEMレベルで観測できる元素濃度の不均一性が存在する.また,L12規則構造を表す超格子反射のX線回折ピークの半値幅が大きい.すなわち,結晶構造の規則度が低いと推察される.そこで,熱処理によって濃度の不均一性の解消や規則度の向上を目指す.特に濃度の不均一性と低規則度の間には関連があると考えられるため,濃度不均一性の変化に伴う規則度の変化について明らかにすることを目的として研究を遂行する. また,上記の微視的なスケールでの構造制御の指針を獲得した後,機械的性質を調べる圧縮試験を行う.特に,セル構造,微視組織(元素濃度不均一性),結晶構造(規則度)の異なる試料での圧縮試験を行い,これらのマルチスケールにわたる構造と機械的性質との関係を理解する.さらにイメージベース有限要素法に基づく応力解析や変形後の組織観察を行い,高強度発現をもたらすマルチスケール構造を理解する予定である.
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