2021 Fiscal Year Research-status Report
Air-stable and water-resistant n-type organic thermoelectric materials using rational design of molecular-cationic dopant
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21K14428
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
秦 慎一 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (20796271)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機熱電材料 / カーボンナノチューブ / 界面活性剤 / 超分子 / 高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常大気中酸素および水分で、多くの有機材料および炭素ベース材料のn型半導体特性は、次第と劣化する。フレキシブルデバイスの高出力化・高集積化ために、この特性を持続させるドーパント設計は重要である。2021年度は、大気および水性環境でも特性が保持されるn型カーボンナノチューブ(CNT)フィルムの開発とその有機熱電特性を経時的に調べることを目的とした。とくにドーパントとして界面活性剤および電子供与性化合物を網羅的に検討し、以下の成果を見出した。なおこれらの成果は、既に学術雑誌に投稿され受理されている。 ・CNT分散剤にカチオン界面活性剤を使用したところ、得られたフィルムでは、水性環境下におけるn型特性が一ヶ月以上も劣化しなかった。ナノチューブに対する界面活性剤の分子吸着層は、電子活性サイトから水分子を保護する役割があることがわかった。(Energy Mater. Adv. 2022, 9854657) ・電子供与性化合物の中で超塩基化合物は、ナノチューブに優れた熱電特性を付与する優れたドーパントであった。ポリアミドアミンデンドリマーを使用して、ドープCNTを封止したところ、この材料の熱電出力がほとんど劣化せず、80℃大気環境下でも一ヶ月以上保持されることが明らかとなった。(Diam. Relat. Mater. 2021, 120, 108656) ・超分子化合物サイクレンで調製されたCNTフィルムはn型であるが、Cuイオンを添加するとp型へと変換された。このキャリア転換はドーパントにおけるサイクレンおよびCuイオン間の化学的相互作用に基づいていることが明らかとなり、水溶性ドーパントによるキャリアスイッチングが可能となった。(Mater. Adv., 2022, 3, 373)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今日の経済では、低い動作温度に加えて、高いレベルの安全性を維持しながら、高い弾性、変形能、および柔軟性を備えた高度なエネルギー貯蔵デバイスが必要とされている。さらに、環境の持続可能性、廃棄/再利用、費用対効果、および可用性は、実用的な熱電デバイスの製造で考慮すべき重要な側面である。Bi-Te物質などの無機カルコゲニドは、CNTに高い性能を与えることができる。ただし、それらの希少性、脆性、不十分な作業性、および未知の連続キャリア安定性は、特にフレキシブルおよびウェアラブルデバイスとの統合を大幅に制限する重大な欠点である。熱力学的に安定したn型材料と見なすことができる他の有望なシステムは極めて限定されており、大部分はドーパントの導入時に生成される一時的な動的n形成である可能性がある。この状況を踏まえると、現在までの本課題の成果・進捗状況は極め良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで報告されている多くの系は、大気および水性環境での長期的なパフォーマンスに関する検討はほとんど無視されており、時間の経過に伴うn型熱電特性は明らかではない。本課題のこれまでの実験結果に基づいた場合、ナノチューブに吸着されたドーパントのコンフォメーションは、安定性を獲得するための鍵であり、さらなるドーパントシェルの重要性を示している。また、より一層の構造分析によって最適なn型安定化メカニズムに関する洞察が得られることが予想される。将来のフレキシブルエレクトロニクスの機能化に重要な詳細な電子構造とキャリア輸送特性を研究するさらなる研究が必要とされる。本課題は順調に計画が進んでいるため、次年度はこれらの電子状態と構造解析を進めるとともに、理想的なドーパント設計に焦点を当て研究を進める。これらの結果に基づいて、将来的に本研究では、比較的安価・簡便的手法で化学的安定性に優れたn型の有機熱電材料を開発する。
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Causes of Carryover |
研究の推進のために役立てる。
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Research Products
(8 results)